No.94 1996年7月

人口高齢化の家計貯蓄への影響

−郵政研究所アンケート調査による考察−

                            第二経営経済研究部長  大田  清
                               同  研究部   桜井 俊行
                               同  研究部   渡部 和孝

 今後の人口高齢化の進展に伴う家計貯蓄率の低下テンポがどの程度であるかに関する情報を、郵政研究所のアンケート調査からみてみた。
 引退後の高齢者の貯蓄積み増し・取り崩し状況を、目的別の貯蓄に関する情報等から求めてみると、平均的には金融資産はむしろ積み増されているようである。ただ、住宅の減価償却を控除するとマイナスとなるとみられる。
 遺産をどれほど残す予定であるかも貯畜取り崩しに関する情報を与えるが、金融資産を多く残そうとする者は多くなく、この面だけからみれば、金融資産は取り崩されていくはずのように見える。しかし実際に取り崩されていないのは、やはり将来の不確実性のためであろう。
 また、若年人口の増加も、貯蓄率を引き下げる方向には働くとみられる。それは、例えば、世代間移転との関わりで言えば、住宅等を相続する確立が高まって貯畜性向を弱めるという形で現れるかもしれない。しかし、アンケート調査では、親から相続がある者は、自分の子供にも遺産を残す意志が強いことが示されており、この傾向が持続するならば、貯蓄率の低下を抑えることになる。
 以上のように郵政研究所のアンケート調査は、今後、人口の高齢化が進むために、貯畜率は低下していくとみられるが、その低下テンポが極めて速いということにはならない可能性が高いことを示唆している。