86 1995年12月

『公的年金への期待と貯蓄行動、老後の就業予定』

―1994年郵政研究所アンケート調査による分析―

                             第二経営経済研究部長 太田  清
                                    研究官 桜井 俊行
 郵政研究所が1994年11月に実施したアンケート調査(家計における金融資産選択に関する調査)の個標データを用いて、世帯主が60歳未満の世帯について、老後の公的年金への期待の大きさ(老後において生活費をどの程度まかなえると考えているか)が、現在の貯蓄行動や老後の就業予定にどのように影響しているかを分析した。
  1.  まず、老後の公的年金への期待の強さについては、若い世代ほど期待が弱く、将来の公的年金に対して悲観的であることがわかった。
  2.  職業別には、当然ながら、サラリーマン世帯の方が非サラリーマン世帯よりも公的年金への期待度が強いことが確認された。
  3.  公的年金への期待と現在の貯蓄性向の関係については、当該アンケート調査から各世帯の貯蓄率をどのようにして求めるかによって結果が異なるが、求められた2つの貯蓄率のうち、月々の生活費を消費支出額の代理変数であるとして求めた貯蓄率についてみると、公的年金の需給期待額が大きくなると貯蓄率が低下することが確認された。
  4.  また、公的年金への期待が小さいほど個人年金を利用しようとする傾向も見られた。上記1.の点もあり、今後とも個人年金に対する需給は大きくなっていくという可能性が示唆されている。
  5.  公的年金への期待と老後の就業予定には比較的クリアーな相関があり、期待度が低いほど老後にも就業することを予定する傾向がある。すなわち、公的年金の退職促進効果ないし老後の就業へのマイナス効果が確認された。このことは、配偶者の就業予定についても同様であった。