4.まとめ
 本論文では、リスクと非対称情報を考慮した簡単なモデルによって、公的金融と民間金融の行動を定式化し、その実証分析を行った。ここでのモデルのように、金融仲介の費用条件と公的金融の収支相償行動を明示的に取り入れたリスク・モデルはおそらく例がないものと思われる。

 モデルの重要な含意は、公的金融が貸出市場のスタビライザーとして機能しうることと、ベンチャー・ビジネスのような、リスクが大きく、担保の少ない借り手に対して貸出を行えるということであり、いわゆる「量的補完」、「質的補完」の機能を裏付けるものと言える。  実証結果は、データの制約から、全面的に信頼できるものではないが、モデルと整合的であり、特に公的金融の行動については、モデルと反する結果は観察されなかった。

 もちろん、この実証結果は不十分なものであり、今後はその精緻化を試みたい。



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