III. CCAPMとの関係


 見えざる出資によって投資家の株式需要が影響を受ける時、その均衡期待収益率も影響を受けるであろうか。それは非市場性の資産をそれぞれの家計が保有していることになるので、期待収益率も影響を受けることになる。資産価格理論においてもβで期待収益率を定式化するCAPMは成立しないことになる。
 ところが消費、および消費βによって定式化されるCCAPMは依然保持されることになる6)。例えば、(1)から(4)式の最適化問題における最適化の必要条件として、

   -U’(C)+EU’(C)(1+rS)/(1+ρ)=0

   -U’(C)+EU’(C)(1+r)/(1+ρ)=0

が導かれ、これは標準的なCCAPMにおけるオイラー条件と全く同じだからである。このようにCCAPMはその背後にどのような市場均衡モデルがあろうと、その期待収益率を消費を用いて定式化する(これがCCAPMに他ならないが)限り、それが一種の誘導形でもあることから全く同じ結果をもたらすのである。要するに、CCAPMで議論する限り、その背後にどのような経済モデルがあるのかに関しては全く情報を与えてくれないのである。したがって我が国の資本市場に関してCCAPMが棄却されなくとも、それが直ちに米国型資本市場と同一であることを意味するものではなく、そこには本論文での経済モデルも許容するものなのである。   



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