1. はじめに

 本論文の目的は、従前から利用されている「加入電話」と「公衆電話」に普及の著しい「PHS」と「自動車携帯電話」を加えた複数の通話メディアの地域間の通話需要を統合的に説明するモデルを開発し、都道府県間通話需要を分析することである。本論文では通話需要分析を交通と通信の差異を考慮しつつ、交通需要分析と整合的な方法で行うことに特長がある。

「情報」の伝達である通信と「人」や「もの」の移動である交通は、両者とも本質は空間移動であり、地域間交流の指標として捉えた場合は類似点が多い , , , , , , 。交通分野では、都市・地域計画を行う際に、交通渋滞緩和等の政策上の必要性から「交通需要分析」を実務的にも重要視してきた。一方通信分野では、その社会的な位置付けが異なっていたこともあって、料金政策等経済学的な観点から需要曲線を推定した研究、地理学的な観点から重力モデルを推定した研究が中心となっている , , , 。 そこで、本論文では交通需要予測における四段階推定法との整合性を図りつつ、交通と通信の差異を考慮した「通話需要分析モデル」を構築する。この際には、電気通信事業法報告規則に基づき各通信事業者から提出されたトラヒックデータを発信通話メディア別に再構成して作成した平成7年度の都道府県間トラヒックデータを用いている。

このようなモデルを開発することにより、都道府県の社会経済特性から各都道府県の発信着信通話量、都道府県間の距離や料金特性から地域間通話量、通話メディアの特性から情報メディア別の分担通話量、さらに各通信事業者の通信ネットワークへの配分通話量というように、通話需要構造全体を明らかにするモデルを構築することが可能となる。



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