5. 業務通話需要分析

本章では平成7年度のNTT事務用加入電話(加入電話発信加入電話着信)のトラヒックデータを用いて、業務用の通話がどのような特性を持っているかを分析する。5、6ではデータの制約上、事務用と加入用が明らかになっているNTTの加入電話発加入電話着のデータを用いる。加入電話発加入電話着のトラヒックでは、遠距離ほど長距離系NCCのシェアが高くなっているため、NTTのみのデータを用いた場合に遠距離ほど通話量が減少する傾向が強く出ることに留意する必要がある。




5.1. 発信着信業務通話量モデル

NTTの平成7年度事務用加入電話の都道府県別発信通話量、着信通話量を被説明変数とするモデルを構築した。

各都道府県の発信通話量、着信通話量の違いは事業所数の集積の程度の違いを原因としていると考えられる。さらに、事業所の中でも、単独事業所、本社、支社といった区分により通話需要に与える影響には差があると考えられる。そこで、総務庁統計局「平成3年度事業所統計調査報告」をもとに、事業所を個人経営事業所、単独事業所、本所・本社・本店、支所・支社・支店、国・地方公共団体のように5区分し、各事業所区分の従業員数を説明変数とした。

事業所統計調査報告を用いる利点としては、個人経営の農林漁業を除く全国全ての事業所をモデルの中に反映できることが挙げられる。事業所が通話需要に与える影響を考える際に、事業所数ではなく、従業者数を用いている。これは、地域による事業所規模の差が与える影響を排除するためである。

また、事業所間が集積することによって通話需要に与える影響がより大きくなることを考慮するために式10、式11のような指数型関数を考える。



両辺の対数をとり、重回帰分析を行った結果を表 5-1と表 5-2に示す。



表 5-1 業務発信通話量モデルの推計結果



表 5-2 業務着信通話量モデルの推計結果



発信着信共に、自由度修正済み決定係数0.98以上の良好なモデルを得た。相対的に個人経営事業所と単独事業所の従業者数の影響が大きく、本所・本社・本店、支所・支社・支店、国・地方公共団体従業者数の影響は小さい。これは、個人経営事業所及び単独事業所では、事業所の規模が小さいために事業所内で完結するコミュニケーションが少なく、事業所外の相手と電話でコミュニケーションを行う必要があるためであると考えられる。また、本所・本社・本店、支所・支社・支店の偏回帰係数が小さいのは、社内ネットワークが専用線で構築されていて社内の通話が通話トラヒックデータに含まれていない影響が出ていることも考えられる。

発信と着信を比較してみると、ほぼ同じ傾向ではあるが、国・地方公共団体では発信よりも着信で偏回帰係数が大きくなっている。これは、業務の性質から通話行動が受動的になっていることに起因していると思われる。




5.2. 地域間業務通話量モデル

NTTの平成7年度事務用加入電話の都道府県間通話量を用いて、4.2と同様に都道府県間通話量を被説明変数とするモデルを構築した。


表 5-3 業務地域間通話量におけるkとa

推計されたkは4.2で述べた通話メディア計の場合と同様、域内距離として用いられる場合が多い1よりもかなり小さく、通話の域内距離はかなり小さいことがわかる。 また、aは通話メディア計の場合より大きくなっており、業務用の加入電話発加入電話着では物理距離による通話の減少の度合は加入電話発加入電話着のそれより著しいことがわかる。 収束計算によって得たAiとBjは4.2と同様、共に大都市を有する都道府県で小さく、そうでない都道府県で大きい傾向が見られた。このAiとBjを用いて推計したT'ijと実績値Tijの相関係数は0.9916であった。


民営の個人経営の事業所等。個人経営の事業所の他に、外国会社、会社以外の法人、法人でない団体を含む。

民営の会社組織の単独事業所(外国会社を除く)

民営の会社組織の本所・本社・本店(外国会社を除く)

民営の会社組織の支所・支社・支店(外国会社を除く)



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