7. まとめ

本論文では、地域間通話需要分析モデルを、交通分野の交通需要分析モデルの四段階推定法に対応する手法によって構築し、都道府県間の通話需要の分析を行った。得られた結論を整理すると以下のとおりである。

加入電話、公衆電話、自動車携帯電話、PHSのトラヒックを全て合わせた全通話需要分析によって以下の内容が得られた。



a. 各都道府県の発信通話量、着信通話量は、各都道府県の人口、通話メディアの普及状況を説明変数とするモデルで説明できた。普及が進みつつある移動体通信は各都道府県の発信着信通話量に及ぼす影響が大きい。

b. 都道府県間通話については、域内距離の修正パラメータを導入した二重制約モデルを新たに適用し、通話距離を説明変数としたモデルを構築した。通話時間は通話距離にほぼ反比例していることがわかった。

c. 通話メディアの分担については、発信都道府県における各通話メディアの通話比率や各都道府県間の通話距離の影響に関する定性的な知見を得た。



NTT加入電話発加入電話着のトラヒックデータを用いた業務及び私用(住宅)通話の需要分析によって以下の内容が得られた。

a. 業務通話の各都道府県の発信着信は、事業所従業員を説明変数とした指数型関数で説明できた。単独事業所や個人経営事業所の従業員数が相対的に強い影響を通話需要に与える。

b. 住宅通話については業務通話ほどの説明力は得られなかったものの、各都道府県の年齢構成を説明変数としたモデルが構築できた。20歳以上40歳未満の年齢層が通話需要に与える影響は極めて強い。

c. 都道府県間通話についても全通話の場合と同様の二重制約モデルで説明できた。

今回は平成7年度のトラヒックデータのみを対象としたが、今後、過去のトラヒックデータや発表が予定される平成8年度のトラヒックデータも含めて時系列データによる分析、モデルの精緻化を進めることにより、事業所・人口の移動や移動体の普及が通話トラヒックに与える影響等に関するより多くの知見が得られるものと考える。




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