1. はじめに



本研究の目的は、携帯・自動車電話事業及びPHS事業(以下、「移動体通信事業」と称す。)の現状を把握し、今後の政策展開のための議論の基礎資料を提供することにある。

 技術革新と規制緩和を背景に移動体通信サービスに関する市場はこれまで順調に拡大してきたが、ここにきてサービス間・事業者間にある程度の格差がつきつつある。まず、サービス毎の観点でみてみると、携帯・自動車電話(以下、「携帯電話」と称す。)の加入者数は1998年1月末で対前月比2.5%増の2,947万5千人に達し、引き続き順調に伸びている一方で、PHSに関しては前月比1.0%減の692万4千人となっており、「料金が安い携帯電話」として営業を展開してきたPHS各社はマーケティング戦略の根本的な見直しを一部で迫られている。また、同一サービスを行う各社の間においても優劣の差が顕れつつあり、「強い事業者はより強くなる」という現象が見られる。実際、携帯電話の分野ではNTTドコモグループがシェアを伸ばしており、1998年1月末時点で、全携帯電話加入者の56.6%を顧客として獲得しており、前年同期よりも5.4ポイントだけシェアを伸ばしている。市場全体のパイが縮小しているPHSにおいては、DDIポケット電話グループが前年同期比3.2ポイント増の49.7%のシェアを獲得しており、市場支配の度合を一層強めつつある。

 本研究では、こうした移動体通信事業分野を研究対象に、ヒアリング調査及びアンケート調査などを実施し、それらから得られたデータをもとに分析を行った。 本稿の構成は以下のとおりである。まず次節において、移動体通信サービスに関する地域毎の普及状況を分析し、最終的な普及水準の予測を行い、併せて、競争導入時点の違いが及ぼす影響を明らかにする。次いで、1997年12月に実施したアンケート調査で得られたデータをもとに、第3節において現在提供されている移動体通信サービスの料金プランの特徴とそれがどの程度の需要を引き寄せているかを主成分分析に基づいて分析し、第4節では、移動体通信事業者各社の事業展開状況を把握する。続く第5節及び第6節では、各移動体通信サービス毎の加入者数を被説明変数として様々な角度からの重回帰分析を試みる。最後の第7節においては、全体のまとめと今後の移動体通信事業の課題整理を行う。



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