4. 移動体通信事業者に対するアンケート調査について


 今回、全国の携帯電話事業者30社及びPHS事業者28社に対して、各事業者が移動通信市場に対する現状認識と今後の事業展開の方向性を把握するために、アンケート調査を実施した。また、アンケート調査を補足する形で、特に定性的な項目を中心に携帯電話事業者5社(関東2社、東北3社)とPHS事業者6社(関東3社、東北3社)に対してヒアリング調査を実施した。 その概要は以下のとおりである。


4.1. 優位性の比較(携帯電話とPHSとの比較)

 携帯電話とPHSの事業者自身が、下記の(1)〜(9)の各サービス特性に関して、携帯電話とPHSを比較してどちらが優位性を持っていると考えているかを、現在と将来(3年後程度)についてアンケート調査(携帯優位、違いがない、PHS優位から三者択一)し比較したものが図 4-1である。

(比較項目)
(1) 個人ユーザに対する訴求性
(2) 法人ユーザに対する訴求性
(3) エリアの広さ・密度(「つながりやすさ」)
(4) 通話料金レベル(基本料金含む)
(5) 通話音質
(6) データ通信機能の訴求性(対個人)
(7) データ通信機能の訴求性(対法人)
(8) 端末の軽さ
(9) 端末料金

「現在」の状況としては、(1)〜(3)に関しては携帯電話優位、(4)〜(9)に関してはPHS優位と考えている事業者が多いが、「将来」についてはそれぞれの優位性は小さくなり、携帯電話とPHSのサービス特性の差がなくなる方向に進むと考えられている。これは、将来的な通信方式の改良等の技術革新により格差が改善されるということに加え、それぞれの事業者自身の企業努力によるエリア展開 や営業推進などの将来的な経営方針を反映していると考えられる。


図 4-1 携帯電話とPHSの優位性比較

 また、事業者に対するヒアリング調査により、実際の事業展開において、携帯電話とPHSのそれぞれの優位性をどのように考えているかということを整理すると、まず、PHSの優位性としては、

  • PHSは、通信容量が大きいことから、音声の品質が良く、有線とほぼ同じレベルで会話できること。
  • 携帯電話の場合、データ通信は今のところ9.6kbpsが限界であるが、PHSは、32kbpsの高速データ通信が可能なこと。
  • アンテナごとの対象地域が狭いために、ビルや地下鉄等のきめこまかなエリア展開が可能なこと。
  • 携帯電話の値下げにより開始当初ほどの格差はなくなってきたが、料金水準が低いこと。
  • 端末が、小型で軽いこと。

    一方、携帯電話の優位性としては、

  • 先行してネットワークを構築しており、特に屋外におけるモビリティの点で優れていること。

 以上のように、その差は縮小傾向にあるもののトータルにみればPHSの方が圧倒的に優位な面も多い。しかし、PHSの伸び悩みという現状を考えると、利用者からみたらモビリティが両者の比較の重要なポイントとなっていると言える。

 そもそも、事業者としては、携帯電話とPHSは違う分野として育てようという考え方が原点にあった。携帯とPHSが同じ地域で競合すれば、1地域で7社ほどが競争することになり、事業として無理があると考えたからである。そもそも、PHSは固定電話を無線によって延長した物というイメージであり、携帯電話はモビリティに特色があるというすみわけを考えていた。しかし、携帯電話もPHSも利用者からみれば同じと捉えられているのが現状であり、PHSは「安くて軽いがエリアが狭い」というイメージで浸透した。しかし、「安くて軽い」という部分での携帯電話との差がなくなりつつあり、「エリアが狭い」というイメージだけが残って、PHSからの利用者の流出を招いている。

 このPHSから携帯電話への利用者の流出ということについては、車の購入者が、買い換えるたびに徐々に車格をランクアップしていくのと同じようなもので、これはやむをえないこととして、事業者自身、当初からある程度予想していたことではあった。ただ、当初は3年ぐらいでこのような動きが出てくると予想していたが、予想よりも回転が早いという誤算はあったようである。

 このような現象は、PHSと携帯電話という対比の中で、PHSの魅力が相対的に落ちている、ということに原因があり、PHS全体のイメージアップが重要である。安いというイメージも、このまま携帯電話の値下げが進めば、将来的にはPHSと携帯電話の価格差が縮小していくだろう。これからは、データ通信機能、(PHSのセルが小さいことを利用した)位置情報を活用した機能、文字通信機能など、機能面で携帯電話と差別化していく必要がある。



4.2. 優位性の比較(サービスエリア内の同業他社との比較)

サービスエリア内の他社の平均レベル(携帯事業者については他の携帯事業者の平均、PHS事業者については他のPHS事業者の平均)と比較して、下記の(1)〜(8)に関して、自社が優位性を持っていると考えているかを、現在と将来(3年後程度)について調査(優位である、平均的である、劣っているから三者択一)し比較したものが図 4-2、図 4-3である。

(比較項目)
(1) 個人ユーザへの訴求性
(2) 法人ユーザへの訴求性
(3) エリアの広さ・密度(「つながりやすさ」)
(4) 通話料金レベル(基本料金含む)
(5) ブランドイメージ・知名度
(6) 営業力
(7) 技術
(8) 資金力


図 4-2 サービスエリア内の同業他社との優位性比較(携帯電話)

 まず、携帯電話に関しては、(3)の「法人ユーザへの訴求性」が他社より「劣っている」と考えている事業者が若干多くなっているが、他の項目に関しては、いずれも「平均的である」か「優位である」と考えている。現在「劣っている」という事業者に関しても、将来的には改善され平均的になるか優位になると考えている。


図 4-3 サービスエリア内の同業他社との優位性比較(PHS)

 また、PHSに関しても携帯電話とほぼ同様の傾向を示しているが、携帯電話よりもいずれの項目に関しても若干、「優位である」が減少し「平均的である」の割合が高くなっている。 また、事業者は、携帯電話事業者間及びPHS事業者間においては、料金、端末、エリアなどの面で、さほど違いはないと考えている。

 特にPHSは、現在はまだ市場が発展段階にあるので、他のPHS事業者との差別化については、今後の問題であると考えている。それよりも、携帯電話や加入電話とのポジショニングをどうするかが現在の重要な課題となっている。PHS全体が携帯電話に押されているのが現状であり、PHS事業者もPHS同士ではなくPHSと携帯電話の競争の構図を考えている。携帯電話と比較して、携帯電話は投資の回収段階に入っている事業者もあるが、PHSはまだそこに至っていない。PHSはインフラ整備の歴史も浅く、通信方式の改良等もサービス開始以来あまりなされていないので、改善の可能性は十分残されている。



4.3. 加入者層

 携帯電話やPHSの事業展開において主要なユーザとなっている加入者層を調べてみた。調査は、加入者層を法人ユーザー及び男女年齢層別に9に分類し、その事業者において、現在主流となっている加入者層、将来主流としたい加入者層について、構成比が大きいものから順に3位まで順位づけしてもらい、これを1位を3ポイント、2位を2ポイント、3位を1ポイントとし、獲得ポイントの累積を構成比で表示した。(以下、1位から3位まで順位づけして調査したものは、同様にポイント化し図化した。)

 まず、携帯電話については、現在、20〜39歳が主要なユーザ層であり、将来的にもこの層を主流にしたいと考えている。ただし、法人ユーザは将来的により注力したいと考えているようである。 PHSについても、最も大きなユーザ層は20〜39歳であるが、携帯電話に比較すると20歳未満も主要なユーザ層となっている。法人ユーザと併せて20歳未満は将来的にも成長していくユーザ層として期待されている。


図 4-4 携帯電話事業者の主要加入者層


図 4-5 PHS事業者の主要加入者層

 法人ユーザーと個人ユーザーの利用割合をみると、携帯電話、PHSともに圧倒的に個人ユーザーが多くなっている。NTTが携帯電話を始めた当初は、料金が高かったこともありほとんどが法人利用であった、現在は相当数が個人となっている。大口の法人ユーザーは既に加入していることや、個人に比べ1コールあたりの通話時間が短いということもあり、営業ターゲットとしては最重要の対象となっていない。しかし、個人ユーザは夜間に通話が集中し、逆に昼間にはあまり使われていないため、設備の効率からいって、24時間平均したトラフィックにするために、法人ユーザーを今後積極的に増やしていこうという事業者もある。

   個人ユーザーについては、男女比では男性が多いが、徐々に女性も増えている。今後のターゲットとして主婦を考えている事業者もある。女性は男性に比べよく電話をするので、事業者にとっては"よい顧客"と言える。

 年齢で見ると、携帯電話もPHSも若年層の利用者が多いが、特にPHSは集中傾向が強い。若年層が増えた理由としては、料金が安くなり若い人にも使いやすくなったという面と、若年層はその上の世代と比較して通話への支払いをあまり躊躇しないという面があるといえる。しかし、若年層への普及は既に十分なされてきたという見方もある。また、若年層は前述の女性同様によく電話をするので、事業者にとっては"よい顧客"と言えるが、低年齢化とともに、「お小遣い」では料金を払えないという事例も増えており、普及を進める上での課題となっている。このため、未成年の加入に際しては保護者の承諾を得ることを徹底する事業者や、上限料金を設定するサービスを開始している事業者もある。

 現状では、特定の属性に偏っているが、トラフィックも偏るし解約率も多くなるので、将来的には、公衆型のサービスとして、加入電話と同じように国民全体の属性を均等に反映した構成にしたいと考えている。



4.4. 現在及び将来における最優先課題

各事業者に対して、現在及び将来の事業展開において、下記の(1)〜(3)の課題に関し優先順位をつけ、ポイント化したものが図 4-6、図 4-7である。

(1) 加入者数の増加を優先
(2) 主に加入者からの収入増による収益改善
(3) 主に投資・コスト等の削減による収益改善

 携帯電話事業者、PHS事業者ともに傾向はほぼ同じで、現状(アンケート調査実施時点)としては加入者数の増加を優先するという事業者が最も多く半数近くを占めているが、将来的には、収入増による収益改善を優先するという事業者が最も多くなっている。また、投資・コスト削減による収益改善も優先する事業者も現在より将来の方が増えており、事業者は、ある程度需要を獲得できたら、将来的には経営安定を優先していこうという方向性が伺える。


図 4-6 携帯電話事業者の優先課題


図 4-7 PHS事業者の優先課題

 これまで事業者は、グロスの加入者増に重点をおいた販売方針をとっており、格安あるいは無料での端末販売も行ってきた。しかし、最近では安定的な利用をする利用者を増やし収益を改善する方向に変わってきている。解約率は各事業者とも一時期に比べると低下してきているが、無料で端末を手に入れたようなユーザーは、解約に対する抵抗感も少ない。実際、サービス開始当初に加入したユーザーに比べ、乱売合戦が激化した時期のユーザーは解約率が高い。現在、事業者は解約率を下げることを目標に販売方法やインセンティブの見直しを行っている。また、料金の回収もれをなくすために、これまで十分とは言えなかった加入時の与信チェックを今後は強化しようとしている。

 さらに、事業者は投資・コスト削減による収益改善にも努めようとしている。ただ、PHS事業の場合、サービス提供コストのうち、大きな割合を占めているのは、ネットワークと交換機である。これらが自社所有ではないために迅速なサービス立ち上げとリスク軽減が出来たという側面がある一方、コスト削減を図るにも、自分でコントロールできないという問題がある。また、設備の償却には一定の時間がかかるため、特に携帯電話では現行の方式と次世代方式との兼合いで、どのタイミングでどこまで投資するかの判断が難しい問題となっている。



4.5. PR手段と販売チャンネル

 事業者がPR手段として現在もっともコストをかけているかをポイント化したものを、携帯電話事業者、PHS事業者別にみると、ともにテレビのポイントが最も高く全体の半数近くを占めている。次いで、携帯電話事業者の場合は新聞のポイントが高くなっているが、PHS事業者では、店頭でのチラシ等やヘルパーによる販売促進にウエイトが置かれており、新聞の値はそれほど高くない。

 次に、現在及び将来において、販売数の多い販売チャンネルについて同様にみると、現在及び将来ともに、電話・移動通信専門の代理店と量販店の2つで全体の7割以上のポイントを占めている。現在と将来を比較すると、直営の販売店と量販店の割合が若干高くなっているが、傾向としてはほとんど変わっていない。


図 4-8 PR手段


図 4-9 販売チャンネル(携帯電話事業者+PHS事業者)

 テレビ・ラジオによるCMは、若者に対する訴求力が強いことから、20〜30代前半の個人を対象にイメージ広告を中心に行っているが、効果はゆっくり効いてくることから、現時点では、即効性という点で販促活動のほうが重要であると位置づけている事業者が多い。ただ、将来的にはイメージ広告も重要になってくると認識している事業者も多いようである。また、特に10歳代〜20歳代前半の若年層については、広告よりも口コミのほうが大きな効果を生んでいるのではないかという意見もある。

 販売チャンネルとしては、ほとんどの事業者が直営の販売店や専門の代理店などの専売チャンネルと量販店チャンネルの両方を構築しているが、傾向としては、東京は量販店チャンネルが多く、地方では専売チャンネルが多い。また、専売チャンネルは一巡するまでは出足がよかったが、最近では量販店の方が好調で、量販店を重要視する事業者が多くなっている。しかし、販売店の売り方を決める重要要素は販売マージンであり、販売マージンが多ければ多いほど販売店の裁量で割引販売もできるし利ざやを増やすこともできる。このため、事業者の販売チャンネル拡大競争が、端末の安売り合戦を招いてしまったと言える。

 また、最近では、直営の販売店や専門の代理店を充実させ、ユーザーへのアフターサービスを充実させようとする動きも見られる。



4.6. 端末

 端末の機種数及びメーカー数の推移を1社あたり平均の時系列でみると、携帯電話は、機種数、メーカー数ともに着実に増えてきているが、端末の機種数は1996年度には伸びが鈍化してきている。 また、PHSについては、端末の機種数は、わずか2年で携帯電話の機種数を上回っている。メーカー数は、携帯電話と近い値となっていることから、携帯電話のメーカーがPHSも同時に開発販売しているものと思われる。

表 4-1 端末機種数及びメーカー数の推移(事業者一社あたり平均)

 最近では、端末の性能はどれでもほぼ同じということで、新端末でもインパクトも、かつてよりは薄れてきている。今後は機能面よりも、見た目の格好よさや、特に年配者にとっての使い勝手のよさのようなものがポイントになってくるものと考えられている。

 また、端末には、自社ブランドとメーカーブランドがあり、メーカーブランドの場合、メーカーの販売力や販売ルートを活用できるというメリットがある。自社ブランドは、自社の特色を出せるということと、メーカー色を出さないことにより、ユーザーへの責任は当社が負うという意志を明確にできるというメリットがある。どちらのブランドを採用するかは一つの経営判断とも言える。

 問題点としては、メーカーも購入数の大きいところを優先したいということになり、どうしても新しい端末は最初にNTTグループに投入されるというのが現状で、その他の事業者に対しては、当初は平均して約半年後、最近では縮まってきてはいるが、それでも2、3ヶ月後ということが多いとのことである。このことによるシェアへの影響が懸念される。このため一部のPHS事業者においては、これまでのようにすべてのメーカーを相手にするのではなく、メーカーを選別し、少数のメーカーとより密接な関係を保つことにより、メーカーに対する自社のbuying powerを維持しようとする動きもある。

 PHSについて端末の新しい動きを見ると、家庭内でのコードレス電話としての利用については、家庭内ではPHS端末をコードレス電話の子機として利用するもの、PHSの電波を建物内に引き込むものの2つがある。また、データ通信用の端末については、建物外では、PHS端末とモバイルコンピュータ端末との一体化を進め、建物内では、PCカードによる接続を中心に考えており、端末の開発も分けて行っている。



4.7. サービスエリア展開の現状と判断基準

サービスエリア展開の現状をみると、携帯電話事業者、PHS事業者ともに、現在でも積極的に展開を進めているという事業者が圧倒的に多いが、その値は、PHS事業者の参入時期の方が遅かったということもあり、10ポイントほど高くなっている。


図 4-10 サービスエリア展開の現状

また、サービスエリア展開に際しての判断基準について、現在と将来について事業者順位づけしたものをポイント化したものが、図 4-11、図 4-12である。傾向としては、携帯電話事業者、PHS事業者ともに、現在はカバー率を重視するが、将来的には密度を重視するという結果が出ている。


図 4-11 携帯電話事業者のサービスエリア展開の判断基準


図 4-12 PHS事業者のサービスエリア展開の判断基準

 エリア展開に関しては、中核都市から、周辺に徐々に拡大していくというのが一般的であるが、事業者によっては、一定規模以上の全中小都市に一斉にサービスを提供するという戦略をとっているところもある。また、都市内におけるエリア展開は、当初は駅や繁華街などを重点的にカバーし、その後住宅地をカバーするといったように展開している。

 ほとんどの事業者にとって、今後はある程度投資効率の悪い地域にエリア拡大を進めていく必要があるが、事業者にとっては、設備投資が大きな負担となっている。PHS事業者の中には、投資効率の悪い地域へのエリア拡大は程ほどにして、今後は建物内や家庭内を充実させることにより通話量の拡大をはかりたいと方向転換している事業者もある。

 一方、東京や大阪などの需要が高密度の地域や、NTTドコモグループのように需要密度の高い事業者の場合、セルを小ゾーンにしていく必要があるが、技術的にも難しく相当苦労しているのが現状である。ただ、その結果ビルの中でもつながりやすくなり、他の事業者よりもユーザーの使い勝手が向上しているという側側面もある。



4.8. サービス種類別の契約数

 平成8年度末の契約数をみると、PHSがデジタル方式なので、すでにサービス全体の9割近くがデジタル方式となっている。アナログからデジタルへの乗り換え需要もあることから、アナログのシェアは今後も縮小していくものと思われる。また、携帯電話とPHSの比率をみると、PHSは参入が遅かったということもあり全体の4分の1弱となっている。携帯電話については、特に、デジタル方式の中でも800MHz PDCが圧倒的に多く、全体でみても4割以上を占めている。1社あたりの平均契約数でみても、デジタル800MHz PDCが最も大きい値となっている。


図 4-13 サービス種類別契約総数


図 4-14 サービス種類別の1社あたり契約数

(注)サービス種類別の提供社数(回答ベース)
デジタル1.5GHzPDC・・・・15社 デジタル800MHzPDC・・・・18社
アナログNTT(HICAP)・・・・10社 アナログTACS・・・・8社 PHS・・・・28社

 アナログ方式は縮小傾向にあるものの、地方では、まだサービスエリアはアナログ方式の方が広いという事業者もある。ただ、携帯電話事業者もアナログからデジタルへの移行を積極的に進めており、デジタル方式の解約がほとんどないのに対しアナログ方式の解約率は高くなっている。

 また、通話需要のみに頼った携帯電話やPHSのトラヒック増は限界があると考え、データ伝送などの新しいサービスに乗り出す動きが顕著になっている。特にデータ伝送に関して言うと、トラヒック自体は、全体からみてまだまだ少ないが、帯域を広げて32kbpsの高速伝送を可能にしたり、インターネットへの対応を充実したりしている。料金体系も、需要喚起型の料金体系として、大口割引やヘビーユーザー向けの格安プランを検討するなど、データ伝送における料金体系の多様化にも取り組んでいる。

 これ以外にもコンテンツサービスや位置情報検索型のサービスなど革新的なアイデアがいろいろ検討されている。



4.9. 基地局

 基地局数の推移を見ると、携帯電話のデジタル方式の基地局数は大幅な需要増やエリア展開に対応して順調に増加しており、ここ1〜2年をみても倍増している。一方、アナログ方式の基地局数は、ほぼ横ばいで、1社あたりの平均をみると減少に転じている方式もある。また、PHSの基地局数は、セルが小さいために携帯電話に比べ圧倒的に数が多くなっている。

表 4-2 方式別基地局数の推移()は1社平均

基地局の設置については、駅(鉄道会社)、電柱(電力会社)、電話ボックス(通信会社)などの公共機関は、基本的には中立的で、どの事業者に対しても公平に対応している。ただ、資本関係に基づく人的なつながりや交渉のノウハウから、各事業者に得意・不得意は出ているようである。 また、サービス開始が後発になればなるほど、短期間に集中して設備投資をする必要があり、事業者にとって基地局設置の投資負担が大きくなっている。さらに、最近ではビルなどに基地局を作ろうとしても、先行の事業者に先に設置されていたり、反対運動があったりと条件が悪くなっており、ビルのオーナーとの交渉に難渋している。


  1. エリア展開には、面的なカバー率拡大と、既存エリア内の不感地域の解消や通話可能回線数の増強が含まれる。本稿で単に「エリア展開」という際にはこれら全てを含んでいる。


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