郵政研究所月報

2001.6


調査研究論文

通信と交通は代替的か?
−「IT と都市」へのインプリケーション


大阪大学大学院国際公共政策研究科助教授
郵政研究所客員研究官 今川 拓郎

[要約]

 ・ IT(情報通信技術)の進展に伴い、ITが交通や都市に与える影響についての関心が高まりつつある。

・ 通信には、交通と代替的な利用形態のみならず補完的な利用形態も存在すると考えられ、その双方の多寡によって通信技術の交通へのインパクトが決まってくる。

・ 我が国のデータを使って実証分析を行うと、代替的な通信利用は二地点間の距離が長くなるほどその比率が高まるが、補完的な通信利用が常に代替的な通信利用を凌駕し、全体としては通信と交通は補完財となる。

・ 距離や場所の制約を解き放つITが普及する中で、逆に人口や経済活動の都市への集積が加速するという、ITと都市に関する「集積のパラドックス」が観察されている。交通と通信が補完的であれば、ITとフェース・ツー・フェースの双方のコミュニケーション基盤となる都市の魅力は衰えず、今後も存在感を発揮し続ける可能性がある。

全文 「通信と交通は代替的か?」