郵政研究所月報
1998.6
郵便局舎のアメニティに関する研究
技術開発研究センター主任研究官
研究官 |
神山 貞弘
石津千絵美 |
【要約】
現在、郵便作業の機械化や郵便業務の情報化が推進されており、それに伴い郵便作業室内環境が大きく変化している。また、少子化による将来の労働力不足から中高年者や女性の労働力の活用が予想されており、そのための郵便作業室内環境の改善が求められる。
本調査研究では、郵便作業室内で働く職員の室内環境に関する意識及び郵便作業室内の物理的環境の実態調査・分析を行い、職員が働きやすく生産性の高い郵便作業室内環境について新しい環境基準の指標となる基礎データを構築することにより、今後の郵便局舎設計に資することを目的として実施してきた。
まず、現在の郵便局で働く職員が室内環境について何をどう判断することにより「働きやすさ」と評価するかを明らかにするため、3局においてインタビュー調査を実施した。この結果、郵便局舎のアメニティに関する評価項目が600項目ほど抽出され、この中からアメニティ6要素(意欲・精神・身体・安全・効率・社会)に分類した。
次に、より多くの郵便局の傾向を把握するため、インタビュー調査で得られた評価項目について、全国から条件の異なる50局を選定して、総計約1,800名の郵便関係課の内勤職員に対してアンケート調査を実施した。この結果、郵便局舎については、「安全」要素に関して「ふつう」以上の評価であるが、特に「身体」「効率」「精神」の要素について比較的低いという結果になった。また、「全体として働きやすい職場である」という全体総合評価と個別評価との相関関係を分析した。これにより、郵便局舎の総合的なアメニティを改善するポイントが明らかにされた。更に、評価項目について、満足度評価と重要度評価からアメニティの優先度について分析し、アメニティの優先領域が明らかにされた。インタビュー調査局のうち2局の郵便作業室内において、夏冬の2回室内環境の4要素(温熱・空気・音・光)の物理的測定による実態把握・分析を行った。
これらの調査・分析から、現在の郵便局舎のアメニティを改善するポイントは、「身体」要素に関しては冷暖房効果と空気環境、「効率」要素に関しては郵便作業室内のスペースの余裕・レイアウト計画のしやすさ、「精神」要素に関しては休息室のアメニティの改善であると考えられる。
今後は、施設の快適さを維持し向上させるためには、時系列的に施設の快適さの要因を的確に捉え、それを客観的に評価する手法が必要であり、その手法として施設ユーザー評価(POE)が有効な手法の一つであると考えられる。 |
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