郵政研究所月報
1998.7
オンラインショッピングの利用動向
〜一般生活者の意識と今後の課題〜
情報通信システム研究室研究官 井川 正紀
【要約】
本調査研究では、インターネットビジネスの中でも特に「インターネットを利用したオンラインショッピング」に焦点を絞り、ビジネスの実体とユーザの利用動向の把握、既存の通信販売ビジネスとの比較等の調査分析を行った。調査するに当たって、一般ユーザに対するアンケート調査(郵送法)を実施した。
その結果、次のような結論が得られた。
1. インターネットブームが去り、現在は定着の時期に差し掛かっていると言われているが、一部のメディアで報道されているほど、一般生活者にインターネットは定着していない。今回のアンケートでは、ほとんどの一般生活者が「知っている」が「使った事は無い」という結果が出ている。インターネットを利用した経験のある回答者も、ほとんどが仕事での利用である。一般家庭までインターネットが普及するのはまだしばらく時間が必要である。しかしながら、インターネットに対する利用意向は高く、過半数の回答者が興味を持っている。一般生活者でもオンラインコンテンツに興味を持っていることが解った。
2. オンラインショッピング市場が立ち上がらない最大の原因は、家庭のパソコン普及率及びインターネット接続率の低さにある。一般ユーザにとってインターネットの利用環境を整えるには、かなりの初期投資コストとコンピュータ・リテラシーが必要となる。また、現在インターネットを利用しているユーザは、20代〜30代の技術系の男性ビジネスマンに偏っている。これらのユーザは一般的な通信販売ユーザとは異なる属性となっている。
そのため、既存の通信販売や店舗販売と比べて、商品力(魅力的な商品)、品揃え、価格設定、調達力(納期)、利便性、ブランド力(信用)などの総合的な評価において、ユーザの納得が得られなければ、オンラインショッピングは定着しない。サイバーモールを含め、技術的に各種のインタフェースを構築できても、本質的には商品力、価格設定、調達力などの面で大きなメリットが無い限り、ユーザは定着しない。
3. オンラインショッピングに適している商品は、利用者属性に適した商品、安価あるいは希少な商品、新たな情報を必要としない既知の商品、物流を伴わない無形の商品、対人での購買が困難な商品ということになる。
現状では様々な問題から、オンラインショッピングのユーザ及びそれに馴染む商品は限定されてしまう。しかし、このことはオンラインショッピングの将来の市場性を否定するものではない。時間的な問題はあるが、基本的にはオンラインショッピングのユーザ層及びその利用頻度は高まるものと推察される。本調査研究のアンケート調査結果からも明らかなように、オンラインショッピングの潜在的ニーズは高い。
オンラインショッピング事業が普及するためには、パソコンを初めとする情報機器の操作性向上、低価格化、通信料金の引き下げなどの施策を講ずることによって、家庭の情報通信インフラ環境を充実させることが大前提となる。快適なインターネット利用環境にあるユーザを増やすことが、オンラインショッピング普及の第一ステップとなる。このような情報通信インフラの整備は、それを利用してビジネスを行う企業の創意工夫の余地を広げることにも繋がる。産業育成という観点から言えば、行政による積極的な情報通信インフラ整備の推進が望まれる。一方、行政としては、ワンストップ行政サービスの実現が、家庭の情報化を推進する上で有効な一方策になるものと考えられる。 |
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