郵政研究所月報 

1998.7

調査・研究

オンラインショッピングの利用動向

〜一般生活者の意識と今後の課題〜




情報通信システム研究室研究官  井川 正紀 


【要約】

 本調査研究では、インターネットビジネスの中でも特に「インターネットを利用したオンラインショッピング」に焦点を絞り、ビジネスの実体とユーザの利用動向の把握、既存の通信販売ビジネスとの比較等の調査分析を行った。調査するに当たって、一般ユーザに対するアンケート調査(郵送法)を実施した。
 その結果、次のような結論が得られた。

1. インターネットブームが去り、現在は定着の時期に差し掛かっていると言われているが、一部のメディアで報道されているほど、一般生活者にインターネットは定着していない。今回のアンケートでは、ほとんどの一般生活者が「知っている」が「使った事は無い」という結果が出ている。インターネットを利用した経験のある回答者も、ほとんどが仕事での利用である。一般家庭までインターネットが普及するのはまだしばらく時間が必要である。しかしながら、インターネットに対する利用意向は高く、過半数の回答者が興味を持っている。一般生活者でもオンラインコンテンツに興味を持っていることが解った。

2. オンラインショッピング市場が立ち上がらない最大の原因は、家庭のパソコン普及率及びインターネット接続率の低さにある。一般ユーザにとってインターネットの利用環境を整えるには、かなりの初期投資コストとコンピュータ・リテラシーが必要となる。また、現在インターネットを利用しているユーザは、20代〜30代の技術系の男性ビジネスマンに偏っている。これらのユーザは一般的な通信販売ユーザとは異なる属性となっている。
そのため、既存の通信販売や店舗販売と比べて、商品力(魅力的な商品)、品揃え、価格設定、調達力(納期)、利便性、ブランド力(信用)などの総合的な評価において、ユーザの納得が得られなければ、オンラインショッピングは定着しない。サイバーモールを含め、技術的に各種のインタフェースを構築できても、本質的には商品力、価格設定、調達力などの面で大きなメリットが無い限り、ユーザは定着しない。

3. オンラインショッピングに適している商品は、利用者属性に適した商品、安価あるいは希少な商品、新たな情報を必要としない既知の商品、物流を伴わない無形の商品、対人での購買が困難な商品ということになる。
現状では様々な問題から、オンラインショッピングのユーザ及びそれに馴染む商品は限定されてしまう。しかし、このことはオンラインショッピングの将来の市場性を否定するものではない。時間的な問題はあるが、基本的にはオンラインショッピングのユーザ層及びその利用頻度は高まるものと推察される。本調査研究のアンケート調査結果からも明らかなように、オンラインショッピングの潜在的ニーズは高い。

 オンラインショッピング事業が普及するためには、パソコンを初めとする情報機器の操作性向上、低価格化、通信料金の引き下げなどの施策を講ずることによって、家庭の情報通信インフラ環境を充実させることが大前提となる。快適なインターネット利用環境にあるユーザを増やすことが、オンラインショッピング普及の第一ステップとなる。このような情報通信インフラの整備は、それを利用してビジネスを行う企業の創意工夫の余地を広げることにも繋がる。産業育成という観点から言えば、行政による積極的な情報通信インフラ整備の推進が望まれる。一方、行政としては、ワンストップ行政サービスの実現が、家庭の情報化を推進する上で有効な一方策になるものと考えられる。

調査・研究(井川正紀)

1.調査研究の背景と目的
 ここ数年、一般家庭の情報化が急速に進展していると言われている。コンピュータの処理能力の向上やインターフェース技術の飛躍的な向上、さらには低価格化により、一般家庭でもコンピュータを購入し易くなった。また、インターネットの爆発的な普及により、家庭にいてもネットワークに容易に繋げる事が可能となった。中には、個人でインターネットのホームページを構築したり、モバイルの環境で在宅勤務を行っている例もある。
 このような状況の中、インターネットを利用した各種サービスが提供され始めた。オンラインでショッピングを行うサービスやチケット予約、電子新聞やオンラインゲーム等がそれである。
 これらサービスに対して企業側はインターネットブームに遅れまいと参入を行った。しかしその結果、ただ店舗をインターネット上に構築しただけのサイトや、容量の多いデータを並べてダウンロードに時間の掛かるサイトが増加し、ユーザの支持を得られず閉鎖するケースも多く見られ、「サイバーモール崩壊論」もあちこちで聞かれるようになってきた。最近では、その方向性を商店街(モール)以外に求め始めたり、地域密着型のコミュニケーションスペースに方向性を見い出したりと、サイバーモールのあり方自体が変化を見せ始めている。ここ1年では、本当にユーザが求めているものと提供しようと、異なったアプローチを見せているケースも多い。
 また、これらのサービスには、セキュリティ、個人認証、ネットワーク上での金銭の流通問題も多く、技術面での改善はなされているものの、一般への普及までには至っていない。
 このような背景を踏まえ、本調査研究では、一般ユーザのインターネットに対する意識を調査し、特に「インターネットを利用したオンラインショッピング」の、ビジネスの実体とユーザの利用動向の把握、既存の通信販売ビジネスとの比較等の調査分析を行う。

2.調査研究の概要

2.1 基本概念の定義
 本調査研究に関わる用語を以下にまとめる。

(1) オンラインショッピング
 インターネットを利用した、純粋に商品を取り扱う通信販売(物及びデータ、音楽等の情報)のみを行う。一般的に、実社会における店舗や営業所を電子的に表現した店舗上で、商品を取り扱う。運営団体が企業か、個人かは問わない。

(2) 通信販売
 種々の通信手段を用いて販売を行う事を通信販売という。例えばテレビショッピングのように商品情報はテレビで放送し、注文や問い合わせは電話やFAXで行う等のように、通信手段が異なるものも含む。

(3) 既存通販
 本調査研究における既存通販(既存の通信販売)とは、インターネット以外の通信手段により通信販売を行っているものと定義する。主にダイレクトメールで送付されるカタログにより商品情報を提供しており、消費者はこのカタログを見て、欲しい商品を電話、郵便、FAX等の通信手段により購入申し込みを行う。また支払いは、商品引き替え、振り込み、クレジットカード等によるのが一般的である。
 この他に、CATVやテレビで商品紹介を行っているテレビショッピングのように会員に対して商品情報を提供し、そのネットワークを介して商品の売買を行っている通信販売等がある。

(4) 国内外サイト
 本調査研究における国内サイトおよび国外サイトとは、それそれ国内事業者および海外事業者がインターネット上で運営しているサイトと定義する。サイトを構築しているサーバーの設置場所(国内あるいは海外)は問わない。

表2.1−1 通信販売の区分

通信販売 既存の通信販売
オンラインショッピング

調査・研究(井川正紀)

3.アンケート調査

3.1 調査概要
 本研究調査では一般ユーザのインターネットに対する意識、既存通販やオンラインショッピングに対する一般ユーザの認識、購買行動、利用意向等を見るために等を把握するため、アンケート調査を実施した。
 一般ユーザには、オンラインショッピングに対する認識のない人も存在し、必ずしもコンピュータリテラシーの高い人ばかりではないが、コンピュータに触れたことのない人達を中心とした一般動向を見る上では重要な対象である。

3.2 調査実施要領
 一般ユーザアンケート調査の実施要領を以下に示す。
 なお、調査地域は、出来る限り日本全体の縮図(DID、人口構成比、民力水準等)となるような特性を持った地域を選定するという目的から、静岡県とした。
表3.2−1 一般ユーザアンケート調査の実施要領

項目 実施要領
調査対象 18歳〜64歳の一般男女
調査地域 静岡県
調査方法 郵送法(自記入式)
標本抽出法 日本統計調査のマスターサンプルから性×年齢別に層化割当無作為抽出
標本サイズ 設定数350/有効回答数245(回収率70%)
調査時期 1997年11月27日〜1997年12月15日

表3.2−2 調査対象地域としての静岡県の特徴

DTD 一人当たり民力水準 人口構成比
15歳未満 15〜29歳 30〜44歳 45〜64歳 65歳以上
全国平均 63.2 100.0 16.5% 21.9% 20.5% 27.2% 13.9%
静岡県 70.1 100.7 16.6% 21.1% 20.3% 27.9% 14.0%

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3.3 調査対象者の概要

(1) 属性
 本調査対象者の属性を以下にまとめる。性別では、回答者245名に対して、男性49.4%、女性50.6%、年齢別では10〜19歳7.8%、20〜24歳6.9%、25〜29歳11.4%、30〜34歳9.0%、35〜39歳10.2%、40〜44歳15.9%、45〜49歳9.0%、50〜54歳9.4%、55〜59歳9.8%、60歳以上10.6%となっている。本調査は性×年齢別に層化割当無作為抽出を行っており、性別および年齢の分布はその結果を反映したものとなっている。既婚者・未婚者別では、既婚者73.5%、未婚者26.5%であり、既婚者が全体の約3/4を占めている。
 職業別では、事務職9.0%、営業職4.9%、技術職19.2%、研究職0.8%、労務職5.3%、管理職6.1%、役員/経営者2.0%、商工自営業4.9%、自由業1.2%、学生9.8%、パート/アルバイト11.0%、専業主婦21.2%、その他4.5%となっている。
 家族構成は、単身者2.4%、1世代世帯(夫婦だけ)12.7%、2世代世帯(親と子)58.8%、3世代世帯(親と子と孫)25.7%、その他の世帯0.4%であり、2世代世帯が構成比率で約6割を占めている。
 世帯年収は、回答者230名に対して、500万円未満24.8%、500〜1000万円未満54.8%、1000〜1500万円未満16.1%、1500〜2000万円未満3.5%、2000万円以上0.9%となっており、世帯年収500〜1000万円未満の家庭が半数以上を占めている。

図3.3−1 性別図
図3.3−2 年齢
3.3−2 年齢
図3.3−3 結婚有無
図3.3−4 職業
図3.3−5 家族構成
図3.3−6 平均世帯年収

調査・研究(井川正紀)

(2) 情報機器及び情報サービスの普及状況
 調査対象世帯の情報機器および情報サービスの普及状況を以下にまとめる。
 情報機器として取り上げたのは、パソコンとCD-ROMゲーム機である。パソコンとCD-ROMゲーム機の世帯普及率は、回答206世帯および190世帯に対して、「個人で所有」および「家族で所有」を合わせてそれぞれ48.6%ならびに41.6%となっている。
 パソコンの用途に関しては、「会社の仕事 57.6%」、「サイドビジネス 1.0%」、「地域活動 8.1%」、「娯楽 62.6%」、「住所録/家計簿 29.3%」、「その他 9.1%」となっており、仕事(風呂敷残業)あるいは娯楽に利用しているユーザが多いことが分かる。また、パソコンで使用する主なソフトウェアのトップ5は、「ワープロ 76.8%」、「ゲーム 49.5%」、「表計算 40.4%」、「データベース 23.2%」、「電子メール 20.2%」となっており、パソコンの用途を反映した結果となっている。
 サービスとして取り上げたのは、CATV、デジタル衛星放送、パソコン通信、インターネット接続サービス、カタログ通販の会員の6項目である。各サービスの世帯普及率は、「CATV 19.3%」、「デジタル衛星放送 8.7%」、「パソコン通信 15.5%」、「インターネット接続サービス 15.3%」、「カタログ通販会員 62.0%」となっている。郵政省「通信利用動向調査」では、パソコン通信とインターネットプロバイダを区分していないが、双方合わせた世帯普及率は4.6%であり、これに比べて本調査世帯の世帯普及率はかなり高率となっている。
 情報サービスのうち、カタログ通販の加入状況を回答者性別で分析すると、個人で加入している女性回答者が54.9%を占めており、カタログ通販の女性への浸透が伺える。

図3.3−7 所有機器、加入サービス

図3.3−8 カタログ通販

図3.3−9 パソコンの用途


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(3) インターネットの認知度、利用内容、利用意向
 インターネットの認知度については、回答者230名に対して、「実際に使っている(使ったことがある)9.1%」、「どういうものか知っている 57.4%」、「名前は聞いたことがある 32.2%」、「全く知らない 1.3%」となっており、インターネットという言葉が一般家庭に広く浸透していることが分かる。回答者属性別では、男性層でインターネット利用経験比率が14.7%と高いのが特徴である。
 インターネット利用経験を持つ回答者にその利用内容を聞いたところ、回答者21名に対して、「電子メール 71.4%」、「個人的な情報収集もしくはソフトのダウンロード 66.7%」、「サイバーモールやホームページを見る 61.9%」、「仕事上の情報収集もしくはソフトのダウンロード 47.6%」となっており、パソコンの用途と同様に仕事と娯楽に利用していることが分かる。
 インターネット非利用者の利用意向では、回答者203名に対して、「機会があれば使ってみたい 42.9%」、「もっと簡単になれば使ってみたい  21.7%」、「使いたいとは思わない 18.2%」、「周りが使うようになったら考える 11.8%」、「もっとサービスが充実されて便利になったら使ってみたい 5.4%」となっている。条件付きではあるけれども、8割以上の回答者が利用意向を示していることが分かる。ユーザ属性別では年齢に特徴がある。40〜44歳層では、機会があれば使ってみたいの回答比率(42.9%)が高く、逆に60歳以上の高齢者層では、使いたいとは思わないの回答比率(48.0%)が高くなっている。

図3.3−10 主な使用ソフト

図3.3−11 インターネット認知度

図3.3−12 インターネット利用目的

図3.3−13 インターネット利用意向


調査・研究(井川正紀)

(4) インターネットの利用に対するイメージ
 インターネットを利用して各種オンラインサービスを受けることへのイメージについては、回答者238名に対して、「ネットワークを利用することで安くなるなら利用したい 33.6%」、「誰かが教えてくれれば利用してみたい 24.4%」、「大変便利だと思うので是非利用してみたい 17.6%」、「周りの人が使うようになったら考える 11.3%」、「使いたいと思わない 13.0%」となっており、積極的な利用意向を示す回答者の比率は2割に満たないことが分かる。条件付き利用意向の場合では、「安くなれば」という価格面でのインセンティブを指摘する回答者が最も多い。一方、「誰かが教えてくれれば」あるいは「周りが使うようになれば」という、受動的な利用意向を示す回答者比率は35.7%と最も多い。
 性別では男性が「大変便利だと思うので是非利用してみたい 23.7%」と利用に意欲的であるのに対し、女性は「同 11.7%」と消極的な面が見られる。さらに、女性では「誰かが教えてくれれば利用してみたい 32.5%」という利用意向も特徴的である。
 男性では「周りの人が使うようになったら考える 16.9%」という傾向も見られる。

図3.3−14 利用意向

図3.3−15 利用したいサービス


調査・研究(井川正紀)

(5) インターネット・コンテンツの利用意向
 将来、オンラインサービスを簡単に且つ低価格で利用できる環境が整った場合、家庭で利用したいインターネット・コンテンツとして支持の多かったものは、回答者204名に対して、「ビデオ・オン・デマンド 50.0%」、「チケット販売予約サービス 49.5%」、「オンラインショッピング 47.5%」、「旅行代理店サービス 41.2%」、「電子新聞・雑誌サービス 35.3%」、「ホームバンキング・サービス 35.3%」となっている。各種予約サービスの利用意向が全般的に高いことが特徴的である。また、現在話題にされることの多いオンラインゲームは、以外に利用意向が低い傾向が見られた。
 ユーザ属性別では、全体の傾向に比べて、男性層でオンラインゲーム・サービスの支持率が19.0%と高く、女性層でオンラインショッピングの支持率が68.7%と高いのが特徴である。女性層にはオンラインショッピングの潜在的利用意向が高いことが伺える。
 また、オンラインサービスについては、全般的に女性層の回答率が高く、各種サービスに対する女性層の利用意向の高さ、利用に対する積極性が伺える。

(6) 日常生活の娯楽
 回答者が行っている娯楽のトップ5は、回答者245名に対して、「テレビ 90.6%」、「ショッピングに出かける 49.0%」、「雑誌を見る 49.0%」、「新聞を見る 48.2%」、「友達と出かける 39.6%」となっている。ユーザ属性別では、男性層で「スポーツ」の支持率が高く、女性層で「通販広告を見て楽しむ」、「カタログやチラシを見る」の支持率が高いのが特徴である。
 余暇時間が増えた場合の余暇の過ごし方のトップ3は、回答者244名に対して、「旅行に行く 70.9%」、「友達と出かける 33.6%」、「ショッピングに出かける 31.1%」となっている。時間が増えたらやってみたい娯楽としては、アウトドア指向の強いことが伺える。ここでも、男性層で「スポーツ」の支持率が高いのが特徴である。また、「パソコン通信/インターネット」については、余暇時間が増えても利用はあまり増えないことが分かる。
 余暇時間の増加とショッピング費用の関係については、回答者245名に対して、「かなり増える 5.3%」、「やや増える 51.4%」、「殆ど増えない 43.3%」となっており、余暇時間が増えてもショッピング支出には殆ど変化が無いことを表している。

図3.3−16 日常生活の娯楽

図3.3−17 余暇時間の増加とショッピング費用の関係


調査・研究(井川正紀)

3.4 通信販売の利用状況

(1) 現状の利用状況
 通信販売の利用状況について、回答者245名中、「よく利用している 11.8%」、「たまに利用している 59.6%」、「全く利用していない 28.6%」であり、通信販売利用者は71.4%となっている。
 ユーザ属性別に見ると、特に女性層の利用が多いことが分かる。職業別では、女性層の特徴を反映して専業主婦の通信販売利用率が高いことが特徴である。

(2) 主な利用広告
 通信販売利用者175名において、商品購入に利用する広告メディアの第1位は「国内カタログ 56.0%」であり、圧倒的な定着を見せている。さらに、第2位「会員誌広告 33.7%」、第3位「新聞広告、新聞折り込みチラシ 28.0%」であり、紙メディアによる通信販売がもっとも利用されていることが分かる。「個人輸入カタログ 6.9%」は、近年増加傾向があるとされているが、今回のアンケートでは他紙メディアと比較して、低い利用率であった。
 また「パソコン通信 1.7%」、「CD-ROM 0.0%」はあまり利用されておらず、通信販売においてはまだこれからのメディアであることが分かる。

図3.4−1 通信販売の利用

図3.4−2 通販広告


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3.5 既存通販の利用状況

(1) 利用頻度
 パソコン通信/インターネットを除く、既存メディアを利用した通信販売のに利用頻度について、回答者数171名中、「1回 10.5%」、「2〜4回 62.0%」、「5〜9回 19.3%」、「10〜19回 6.4%」、「20回以上 1.8%」となっている。
 半数以上の回答者が2〜4回利用していると回答しており、全般的に既存通販を複数回利用している傾向が伺える。
 ユーザ属性別では、男性層で1回の比率が16.4%と高く女性の倍の割合である。また10回以上のヘビーユーザは少ない。
 逆に女性層では1回の比率が7.3%と男性と比較して低く、10回以上のヘビーユーザの比率が比較的高いのが特徴である。通信販売は、女性からの強い支持があることがわかる。

(2) 主な購入商品
 既存通販での購入品目のトップ5は「衣料品 79.4%」、「家庭用品 28.6%」、「化粧品、医薬品、美容・健康・医療器具 26.3%」、「服飾雑貨・貴金属 25.1%」、「家具・インテリア用品 23.4%となっており、衣料品の購入が高率であることに特徴がある。
 また、「パソコン関連ハードウェア 1.7%」、「パソコンソフト 1.1%」、「ゲームソフト 0.0%」等、パソコン・ゲームに関する商品はあまり購入されていない。
 さらに、「海外ブランド品 0.6%」、「アダルト商品 0.6%」と、通信販売に向いているのではないかと考えられる商品も、意外と購入されていない結果となった。
 ユーザ属性別では、男性層で「衣料品 58.1%」、「家具・インテリア用品 22.6%」、「趣味・娯楽用品 22.6%」の順に多く、女性層で「衣料品 91.2%」、「家庭用品 38.1%」、「化粧品、医薬品他 32.7%」の順に多い。ユーザ属性による購入商品の相違は「衣料品」、「家庭用品」、「化粧品、医薬品他」、「服飾雑貨・貴金属」で顕著であり、「食料品」、「健康商品」では相違は見られない。

図3.5−1 既存通販の最近1年間の利用頻度

図3.5−2 既存通販の購入商品


調査・研究(井川正紀)

(3) 1回当たりの利用金額
 既存通販利用者の1回当たりの利用金額は、回答者174名に対して、5000円〜2万円の範囲で全体の73.0%を占めている。また、1000円未満の利用金額も18.4%とかなりの比率を占めており、低額商品の購入比率が高いことを表している。
 ユーザ属性別では、男性層で2万円以上の商品の購入比率が17.7%と高いの対し、女性層では殆どが2万円以下の商品を購入していることが特徴である。利用頻度、購入商品、1回当たりの利用金額の特徴をまとめると、男性層では高額商品の家具や娯楽用品を数回、女性層では家庭用品や化粧品などの低額商品を頻繁に購入していることが分かる。

(4) 利用理由
 既存通販を利用した理由で支持率が高いのは、回答者175名に対して、「通信販売で買う方が楽だったから、店に出かける必要がなく手軽に購入できるから 64.6%」、「通信販売でしか買えない商品だったから 44.6%」、「広告を見ていたらつい欲しくなってしまったから 41.1%」、「店に買いに行くよりも安かったから 32.0%」であり、第3位の「広告をみていたらつい」という理由以外は通信販売のメリットが評価された結果となっている。
 ユーザ属性別では、全般的に女性層の回答率が高いが、「通販でしか買えない」は男性48.4%、女性42.5%と男性の回答率が比較的高くなっている。このことは、男性層の主な購入商品が家具・インテリア用品や趣味・娯楽用品が中心であるためと推察される。

図3.5−3 既存通販の1回当たりの利用金額

図3.5−4 既存通販を利用した理由


調査・研究(井川正紀)

(5) 購買行動
 既存通販を利用する際によくある行動として支持率が高かったのは、回答者175名に対して、「通販広告を見ていたら、つい欲しくなって買ってしまう 47.4%」、「購入するものを決めてから、通販広告を見て比較して購入する 32.0%」、「殆どの商品の場合、購入するのは特定の通販会社に決まっている 30.9%」、「通販会社は商品によって使い分けている 26.9%」「購入する商品は事前に決まっている場合が多い(衝動買いは少ない)25.7%」である。「衝動買いが多い」の比率が群を抜いて高いが、「衝動買いが少ない」とする支持率も25〜30%程度の範囲で存在する点が注目される。

図3.5−5 既存通販の購買行動(Q7)


調査・研究(井川正紀)

(6) 不満点と不安点

不満点
 既存通販利用者が感じている不満点のトップ5は、回答者162名に対して、「広告で見た商品のイメージと実物が大きく異なることがある 66.7%」、「商品の価格が店舗販売と変わらない、あるいは店舗販売に比べて安くない 39.5%」、「商品の交換や返品が面倒くさい、交換や返品を受け付けてくれないことがある 17.3%」、「商品の品揃えが不十分である 16.0%」、「魅力的な商品が少ない(希少な商品、高品質な商品などが少ない)13.6%」となっており、広告の作り方(広告の商品イメージと実物の差)、商品性(価格、品揃え、魅力度)、通販会社の対応(返品や交換)に関する不満が上位を占めている。

不安点
 既存通販非利用者が感じている不安点のトップ5は、回答者67名に対して、「広告で見た商品のイメージと実物が違うのではないかと不安である 76.1%」、「商品の交換や返品が面倒くさい、交換や返品を受け付けてくれないのではと不安である 38.8%」、「注文した商品がきちんと送られてくるかどうか不安である 22.4%」、「商品の価格が店舗販売に比べて安くないのではないかと不安である 20.9%」、「クレジット番号など個人情報が盗まれるのではないかと不安である 19.4%」となっている。広告の商品イメージと実物の差に対する不満の指摘率が群を抜いて高く、そのほか、通販会社の対応、商品の価格、セキュリティ(個人情報の漏洩)に関する不安が上位を占めている。

既存通販の課題分析
 不満点及び不安点の指摘率を分析することで、既存通販の課題をイメージ先行課題、顕在課題、潜在課題、二次的課題の4つに分類した。イメージ先行課題とは、利用者の不満の指摘率が低く、非利用者の不安の指摘率が高い項目であり、不安解消のためのユーザの啓蒙が重要となる。顕在課題とは、不満及び不安の指摘率の双方が高い項目であり、イメージと実際が一致している課題である。潜在課題とは、不満の指摘率が高く、不安の指摘率が低い項目であり、ユーザが実際に利用することで初めて分かる課題である。二次的課題は、不満と不安の指摘率の双方が低い課題である。ここで指摘率の高低は、各項目の指摘率の平均値を基準として判断している。
 イメージ先行課題として挙げられた項目は、「商品の未配送」、「セキュリティ」であり、通販会社側の顧客対応力の向上が不安解消につながる。顕在課題として挙げられたのは、「広告と実物の差」、「商品の価格」、「商品の交換や返品」である。特に「広告と実物との差」は最も指摘率の高い課題であり、ユーザに対し、既存メディアを活用した効率的な商品情報の提供手段が求められている。潜在課題として挙げられたのは、「商品の品揃え」であり、顧客の囲い込みという観点からも、商品ラインナップの充実は重要な課題となる。

図3.5−6 既存通販に対する不満

図3.5−7 既存通販に対する不安

図3.5−8 既存通販の不満と不安


調査・研究(井川正紀)

(7) 今後の利用意向
 既存通販の今後の利用意向については、全回答者207名に対して、「是非利用したい 21.3%」、「やや利用したい 59.4%」、「全く利用したいと思わない 19.3%」となっている。現状の利用状況と比較して「全く利用したいと思わない」が大幅に減少し、「是非利用したい」が増加しており、既存通販の今後の増勢が伺える。
 ユーザ属性別では、女性層及び専業主婦層の利用意向比率が9割以上と高いのが特徴である。

(8) 今後利用したい通販広告
 今後の既存通販利用意向者の利用メディアのトップ5は、回答者167名に対して、「国内カタログ 57.5%」、「雑誌広告 29.3%」、「新聞広告、新聞折り込みチラシ 25.7%」、「会員誌広告 21.6%」、「個人輸入(海外通販)カタログ 21.0%」となっている。現利用者の利用メディアと比較すると、「個人輸入(海外通販)カタログ」の割合が14.1ポイントも高くなっているのが特徴である。

図3.5−9 既存通販の今後の利用意向

図3.5−10 今後利用したい通販広告


調査・研究(井川正紀)

3.6 オンラインショッピングの利用状況

(1) 認知度
 インターネットを利用したオンラインショッピングの認知度については、回答者242名中、「利用したことがある 1.2%」、「以前からどんなものか知っていた 16.9%」、「言葉を聞いたことはある 47.5%」、「知らなかった 34.3%」であり、サービス内容を知っている回答者は2割にも満たないことが分かる。インターネットという言葉に比べると、認知度は極めて低い。
 ユーザ属性別では、年齢別に特徴があり、45〜49歳層でオンラインショッピングの経験者比率が9.1%と高く、55歳以上の高齢者層になるほど「知らなかった」という回答比率が4割〜5割以上を占めていることが分かる。

(2) 利用意向
 オンラインショッピングの利用意向については回答者244名に対して、「利用したい 32.8%」、「利用したくない 67.2%」であり、約1/3の回答者が利用意向を持っているという結果が得られた。しかし、オンラインショッピングの認知度が高い回答者層(利用経験がある、あるいは以前から内容を知っていた回答者44名)では、約54.5%が利用意向を表している。
 ユーザ属性別では、年齢別に特徴があり、高齢者層になるほど利用意向が低く、約9割近くが利用したくないと回答していることが分かる。

図3.6−1 オンラインショッピングの認知度

図3.6−2 オンラインショッピングの利用意向


調査・研究(井川正紀)

(3) 購入希望商品
 オンラインショッピングの利用意向を持つ回答者80名に対して、購入希望商品のうち支持率が高い品目は、「衣料品 67.5%」、「服飾雑貨・貴金属 35.0%」、「海外ブランド品 33.8%」、「家具・インテリア用品 32.5%」、「書籍・文具 31.3%」、「趣味・娯楽用品 28.8%」、「ギフト用品、地方特産品 27.5%」、「チケット 26.3%」となっており、既存通販の購入商品で支持率が最も高かった「衣料品」が、オンラインショッピングでも最も高い支持を得ている。なお、オンラインショッピングでは、既存通販の購入商品では支持率の低かった「海外ブランド品」、「書籍・文具」、「ギフト用品、地方特産品」、「チケット」が高い支持率を挙げているのが特徴である。
 ふだん店頭で販売している商品(食料品、日用品などのマス商品)に関する、オンラインショッピングでの購入意向については、回答者80名に対して、「購入できると良い 23.8%」、「商品によっては購入できると良い 35.0%」、「状況によっては購入できると良い 23.8%」、「あまり必要ない 17.5%」となっており、条件付きを含めて購入意向を持つ回答者が8割を超えている。このような商品の購入意向を持つ回答者66名に対して、その条件を聞いたところ支持率の高かった項目は、「持ち運びに苦労する商品 71.2%」、「見比べる必要が無い商品(品質や価格が分かっており、どこで買っても同じような商品)48.5%」、「忙しい、病気などの理由で買い物に出かけられない場合 48.5%」となっている。
 一方、ふだん店頭で販売している商品に関して、オンラインショッピングで購入できる必要はないとする回答者14名に対して、その理由を聞いたところ、「自分の目で商品を確かめたい 78.6%」、「注文してから手元に届くまでに時間がかかりそう 57.1%」、「店頭販売に比べて割高になりそう 42.9%」などの支持率が高かった。

図3.6−3 オンラインショッピングで購入したい商品

図3.6−4 オンラインショッピングでの日用品の購入意向

図3.6−5 オンラインショッピングで日用品を購入したい場合

図3.6−6 オンラインショッピングで日用品を購入する必要がないとした理由


調査・研究(井川正紀)

(4) 非利用理由
 オンラインショッピングの利用意向を持たない回答者162名に、その理由を聞いたところ、「パソコンなどの高価な情報機器を購入しなければならない 42.6%」、「パソコンなどの操作が面倒  38.9%」、「自分の目で商品を確かめて購入したい 38.3%」などの指摘率が特に高かった。基本的には、オンラインショッピングの利用環境を整えるのに、情報機器の購入やリテラシー向上など、ユーザへの負担が大きいことが大きな要因となっているものと推察される。
 ユーザ属性別では、男性層で「目で見て確かめたい」の指摘率が49.4%と最も高く、女性層で「パソコンなどの操作が面倒だから」の指摘率が50.6%と最も高いのが特徴である。全体的な傾向として、パソコンなどの情報機器を利用することに対して積極的でないユーザが多いことが伺える。
 このような問題が解決された場合のオンラインショッピングの利用意向に関しては、現在オンラインショッピングの利用意向を持たない回答者164名のうち約6割が利用意向のあることを示している。しかしながら、上記のような問題が解決された環境下でさえ、約4割の回答者はオンラインショッピングに対して利用意向を示していない。その理由としては、パソコンの使い勝手の向上や価格の低下、パソコンの画面で商品を見ることと店頭販売で直接自分の目で商品を見ることの情報量のギャップは、将来的にも解決され得ないとの認識が根本的にあるからと推察される。また、オンラインショッピングに対して、本質的に必要性を感じていないことも大きな理由として挙げられる。

図3.6−7 オンラインショッピングを利用したくない理由

図3.6−8 オンラインショッピングの利用意向


調査・研究(井川正紀)

3.7 通信販売に関する意見、要望
 今後の通信販売(既存通販、オンラインショッピング)について書かれた意見や要望の多くは、通信販売に関する本質的不満であり、オンラインショッピングの時代に入っても同様な不満となるものが多い。

(1) 通信販売全般の問題
 最大の問題はカタログや画面上で選んだものと実物の違いである。このことが、通信販売に対する不信につながっており、買い物は実物を見て行うという意見が多く見られる。また、価格的にも通販は決して安くない。消費者は販売コストが削減できる通販は当然のごとく安い(品質は高い)ものという先入観があり、この先入観とのギャップが問題となっている。

(2) カタログ通販の問題
 通販の問題で挙げられた苦情として、一般ユーザに送られてくるカタログの多さとそれに起因するカタログの処理の問題がある。地球環境問題がクローズアップされている現在、一般ユーザは多すぎるカタログは資源の無駄と考えている。このことは、オンラインショッピングにとっては有利な状況といえる。

(3) オンラインショッピングの問題
 オンラインショッピングの問題点として、先ずパソコンの導入がある。価格、操作性がやはり関門であり、この関門を超えても消費者はセキュリティ問題、家でパソコンに向かって買い物をする暗いイメージと外部とのコミュニケーション不足を心配しているインターネットに時代としてオンラインショッピングを楽しみにしている消費者もいるが、上記の関門等の問題は出てくるであろう。


調査・研究(井川正紀)

4.まとめ
 インターネットブームが去り、現在は定着の時期に差し掛かっていると言われているが、一部のメディアで報道されているほど、一般生活者にインターネットは定着していない。今回のアンケートでは、ほとんどの一般生活者が「知っている」が「使った事は無い」という結果が出ている。インターネットを利用した経験のある回答者も、ほとんどが仕事での利用である。一般家庭までインターネットが普及するのはまだしばらく時間が必要である。しかしながら、インターネットに対する利用意向は高く、過半数の回答者が興味を持っている。一般生活者でもオンラインコンテンツに興味を持っていることが解った。
 オンラインショッピング市場が立ち上がらない最大の原因は、家庭のパソコン普及率及びインターネット接続率の低さにある。一般ユーザにとってインターネットの利用環境を整えるには、かなりの初期投資コストとコンピュータ・リテラシーが必要となる。また、現在インターネットを利用しているユーザは、20代〜30代の技術系の男性ビジネスマンに偏っている。これらのユーザは基本的にパソコン(あるいはインターネット)が好きな層であり、一般的な通信販売ユーザとは異なる属性となっている。企業側から見ると、この様な特定のユーザ層を対象としたマーケティングが欠如している点も、オンラインショッピング市場の普及を遅らせている大きな要因の一つと考えられる。現状では、既存の通信販売の主要商品でオンラインショッピングで成功している事例は少ない。
 そのため、既存の通信販売や店舗販売と比べて、商品力(魅力的な商品)、品揃え、価格設定、調達力(納期)、利便性、ブランド力(信用)などの総合的な評価において、ユーザの納得が得られなければ、オンラインショッピングは定着しない。サイバーモールを含め、技術的に各種のインタフェースを構築できても、本質的には商品力、価格設定、調達力などの面で大きなメリットが無い限り、ユーザは定着しない。
 以上のような諸条件を考慮すると、オンラインショッピングに適している商品は、利用者属性に適した商品、安価あるいは希少な商品、新たな情報を必要としない既知の商品、物流を伴わない無形の商品、対人での購買が困難な商品ということになる。現在、オンラインショッピングの売れ筋商品となっているのは、パソコン関連商品、書籍(特に洋書)、予約サービスなどである。パソコン関連商品や書籍は、その商品特性から考えると、仕様が分かっていれば実際に物を見なくても購入できる(特定できる)ものであり、インターネットの利用者特性からもオンラインショッピングに馴染む商品と考えられる。ハードウェア商品を扱う限り、物流コストは発生し、それがオンラインショッピング事業のネックとなる。しかし、予約サービスのように無形の情報商品の場合には、ネットワーク上で商取引が完結するため、物流機能は不要である。ホテル等の予約サービスでは、既存の事業基盤を活用できるうえ、低廉な初期投資でサービスを始められるというメリットを活かすことができる。
 現状では様々な問題から、オンラインショッピングのユーザ及びそれに馴染む商品は限定されてしまう。しかし、このことはオンラインショッピングの将来の市場性を否定するものではない。時間的な問題はあるが、基本的にはオンラインショッピングのユーザ層及びその利用頻度は高まるものと推察される。本調査研究のアンケート調査結果からも明らかなように、オンラインショッピングの潜在的ニーズは高い。
 オンラインショッピング事業が普及するためには、パソコンを初めとする情報機器の操作性向上、低価格化、通信料金の引き下げなどの施策を講ずることによって、家庭の情報通信インフラ環境を充実させることが大前提となる。快適なインターネット利用環境にあるユーザを増やすことが、オンラインショッピング普及の第一ステップとなる。このような情報通信インフラの整備は、それを利用してビジネスを行う企業の創意工夫の余地を広げることにも繋がる。産業育成という観点から言えば、行政による積極的な情報通信インフラ整備の推進が望まれる。一方、企業サイドでは、ユーザにオンラインショッピングの利用意欲を起こさせるような、魅力的なコンテンツを作成する努力が必要になる。
 オンラインショピングは歴史が浅いこともあり、現状では魅力的なコンテンツが少ない。そのため、オンラインショッピングが家庭の情報通信インフラ整備を進めるトリガーにはなりにくい状況となっている。現状ではオンラインショッピングを行うために、家庭でコンピュータやネットワークを整備する人は少ない(パソコンやネットワークは生活必需品ではない)。そのため、家庭の情報通信インフラ整備を進めるためには、より魅力的なコンテンツ(オンラインショッピングに限らない)を提案するか、パソコンやインターネットを生活必需品にするような、社会生活に密着した情報サービスを提供することが必要になる。前者の視点のサービスについては、明確な方向性は得られておらず、企業による試行錯誤が行われている状況と考えられる。後者の視点については、企業では、電子メールを初めとするコミュニケーション系サービス(ベーシックニーズの高いサービス)が鍵を握ると考えているところは少なくない。一方、行政としては、ワンストップ行政サービスの実現が、家庭の情報化を推進する上で有効な一方策になるものと考えられる。
 上記の施策を行うことにより、オンラインショッピングは普及し、無形の商品はネットワーク上での流通が主流になるものと考えられる。現状では、通信販売に占める無形商品の割合は比較的少ないため、物流に与える影響も小さいと推察される。しかしながら、将来的に電子メールが定着し、現在の手紙が持つようなステータスを獲得し得た場合には、郵便事業に与える影響は多大なものになると考えられる。


調査・研究(井川正紀)

表4−1 他の商取引と比較したオンラインショッピングのメリット及びデメリット


項目 内容 ユーザ 企業



時間的・地理的制約の解消 商圏拡大
立地条件に左右されない
参入障壁が低い
土地や店舗などの不動産コスト、カタログ作成費など事業開始に必要な投資コストが安い
 
運営に必要な費用も比較的安い  
低廉なサービスの提供 流通の中間マージン、出店・運営コストの削減による低価格化が可能
無形の商品の場合、全ての商取引をインターネット上で完結できる
顧客のライフスタイルに合わせたサービスの提供 24時間サービス提供が可能
商品の数や種類について自由度が高い
店舗容積やカタログの頁数などの制約が無い
豊富な品揃えを実現し易い
内容の更新が行い易い  
マルチメディア性が高い マルチメディア情報を活用した商品情報の提供が可能
商品の検索性が高い
 
ダイレクト・マーケティングが可能 ユーザとの直接対話によるきめの細やかな情報収集が可能
 
サービス向上による差別化が可能




商品の物流コストが必要 ハードウェアを扱う場合、商品の調達や配送などは既存のシステムと変わらない  
物流コストが発生する(物流システムの構築が必要、配送料が発生する)
参入企業が多い 参入企業が多く、競争環境が厳しい
 
ユーザ側の負担の増加 オンラインショッピングを利用環境整備に必要な初期導入コストが高い
 
利用者のリテラシーが必要になる
 
セキュリティに問題あり オープンネットワークを利用するため個人情報や金銭情報などの漏洩等が起こる可能性が高い  
決済手段が未確立 ユーザにとって簡単な決済手段が確立していない
扱える情報量の限界 所詮は仮想空間(ネットワーク)上で扱える情報量の範囲で提供するに過ぎない
実物を忠実に再現することはできない
顧客管理コスト、顧客対応の負荷の増加


ユーザとの直接対話が増加し、顧客対応業務が煩雑になる
 
本格的なマーケティングを行うには、顧客データベースを構築する必要あり  
投資コスト、通信費、人件費が増加
   

調査・研究(井川正紀)

[参考文献]

・「サイバー空間におけるマーケティングの新潮流」藤元健太郎
 DIAMONDハーバード・ビジネスOct.-Nov. 1996 p56−63(株)ダイヤモンド社
・第2回インターネット・アクティブ・ユーザー調査「見て遊ぶ時代は終わった」日経マルチメディア 96.7 p43−70日経BP社
・「経営戦略の転換が迫られる大手総合通販」事業調査部大阪支所 芝原知宏
 投資月報1997.10 p50−67株)日興リサーチセンター
TRY&ERROR「セガサターン ネットワーク端末目指すも接続率わずか1%の大誤算」松本敏明
 日経マルチメディア97.10 p80−85 日経BP社
・「通信販売業界の動向」ヤノ・レポート98.2.10 p70−95(株)矢野経済研究所
・「離陸するか?サイバーモールA 「マーケット形成への模索」」 内田斉
 技術と経済96.10 p46−49(社)科学技術と経済の会
・「インターネット通販は本当に儲かるか」嶋津典代コンピュートピア97.8 p108−109 コンピュータ・エージ社
・「B-to-Cの前提となるB-to-B」今泉大輔コンピュートピア97.10 p102−103コンピュータ・エージ社
・「通信販売業界」〜大手各社収益悪化でカタログ戦略見直し進む。カタログ用紙需要の大幅増は期待薄〜
 ヤノ・レポート97.2.25 p21−46(株)矢野経済研究所
・「どうすればオンラインショッピングは成功するか」ーホームページの類型の研究ー
 ヤノ・ニュース96.6.20 p4−9(株)矢野経済研究所
・「データ編 調査方法と回答者のプロフィール」日経マルチメディア96.1 p82−85 日経BP社
・「通信販売」情報メディア白書p179−183(株)電通総研
・「企業向けに広がるビジネスチャンス」余語邦彦(マッキンゼー・ジャパン・シニア・アドバイザー)
 週刊東洋経済96.4.27−5.4 p34−36 東洋経済新報社
・「日本におけるサイバービジネスの展望」村上輝康
・「インターネットを活用したサイバービジネスの可能性」
 野村総合研究所 社会・地域研究本部事業企画室 研究員 藤元健太郎 斉藤隆史
 野村サーチ95.8 p18−23(株)野村総合研究所
・「EC(電子商取引)時代に向けた新サービスの展開」
 ビジネス・コミュニケーション97 Vol.34 No.4 p29−46(株)ビジネス・コミュニケーション社
・「インタラクティブショッピングのインターフェースデザイン」浅野陽子 浜田洋
 信学技報96.5 p9−16(社)電子情報通信学会
・「インターネットのビジネス利用の展望」野村総合研究所 
 藤元健太郎 産業と情報No.31 p2−26(財)日本情報処理開発協会
・「エレクトロニックコマースの実現に向けた課題とその解決」坂本弘章 川口博司 遊佐洋
 NTT技術ジャーナル96.7 p15−17(株)NTT
・「家庭でのパソコン保有率20%の示すもの」杉井鏡生コンピュートピア97.7 p58−59 コンピュータ・エージ社
・「ネットワーク時代における情報システムコンセプト”FOREFRONT with Cyberspace"」大島信幸 森啓倫
 日立評論Vol.79 No.4(97.4)p4−8 日立評論社
・「ホームサービス」大槻光弘 NEC技報Vol.49 No.1 96 p98−101日本電気
・「BIGLOBEコンテンツサービスの動向」小見山太洋 NEC技報Vol.50 No.197 p3−6 日本電気


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  地域におけるインターネットの活用に関する調査研究