郵政研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ No.1998-18



通話需要関数の推定



河 村 真
実 積 寿 也※※





1998.11.15



要約

電気通信事業は莫大な設備投資を必要とするため、自然独占が成立する典型的な分野の一つであり、そのため何らかの料金規制が必要であると考えられてきた。望ましい料金規制は経済的効率性を満たすことが求められ、そのためには、規模の経済性、範囲の経済性の検討を行う供給サイドの費用構造の分析と並んで、需要関数を推定し、需要の価格弾力性を計測するといった需要サイドの分析が必要である。通話需要関数を推定し、需要の弾力性を計測することによって、以上の政策議論のための基礎資料を提供することが本研究の目的である。具体的には、1997年1月及び1998年2月の2回にわたり郵政研究所が実施したアンケート調査を元に固定電話事業者(日本電信電話梶mNTT]、並びに、新規参入の第一種電気通信事業者[NCC])及び携帯電話事業者が提供する電話サービスに関する通話需要関数をAI需要体系を用いて求め、支出弾力性、自己価格弾力性、及び、交差価格弾力性を推定することを目的とする。本稿での分析の結果、世帯の家族属性が通話支出に一定の影響を及ぼしていることが明らかになり、さらに、NTT、NCC及び携帯電話事業者が提供する通話サービスはいずれもunit elasticityであること、NTTとNCCと携帯電話の三つの通話サービス全てを利用している世帯にとってNTTの電話サービスは、NCCおよび携帯のサービスと補完的である一方、NCCの電話サービスは、携帯のサービスと代替的であることを示す結果が得られた。本稿で得られた需要モデルをさらに精緻なものとし、かつ推定結果を頑健なものとするのが今後の課題である。



1. はじめに



2. 推定に用いたデータについて

2.1. アンケートの概要及びデータの特性
2.2. 家族属性が各電話サービスの支出シェアに与える影響



3. 通話需要関数の推定

3.1. AI需要体系について
3.2. 推定結果
3.3. 支出弾力性及び価格弾力性の推定結果
3.4. 推定結果の評価



4. 結論及び今後の課題



【参考文献】



補 論