国際ボランティア支援

NGO活動状況調査

毎年、賛助会員の方々をNGO海外援助活動助成事業及び旧国際ボランティア貯金の寄附金配分事業が行われている開発途上国に派遣し、NGO活動状況調査を行っています。実際に現地を訪問し、NGOの活動内容・状況を確認し、NGO及び現地の人々との交流を通じて開発途上国の現状や、NGOの果たしている役割・重要性などを確かめていただき、帰国後に周知していただいています。

平成29年度活動状況調査

平成29年度のNGO活動状況調査は、平成30年2月18日(日)~24日(土)までの7日間、当財団役職員2名及び賛助会員企業の参加者6名をフィリピン共和国に派遣し、NGO海外援助活動助成及び旧国際ボランティア貯金の寄附金配分を受けている「認定特定非営利活動法人アイキャン」、「認定特定非営利活動法人国境なき子どもたち」の二つのNGOを対象に実施しました。

なお、当初は「特定非営利活動法人国際開発フロンティア機構」も対象とする予定でしたが、活動地近隣のマヨン山が平成30年1月に噴火し、警戒レベル4となったことから、今回は残念ながら見合わせることとしました。空いた時間を活用して、在フィリピン日本国大使館及び独立行政法人国際協力機構フィリピン事務所を訪問し、フィリピン社会の現状等について貴重なお話を伺うことができました。

この場をお借りいたしまして、お忙しい中をご対応いただきました皆様に厚くお礼を申し上げます。

1 .「認定特定非営利活動法人アイキャン」の活動地視察
(1)ドロップインセンター

マニラ市のかつての繁華街ブルメントリット地区では、鉄道敷や路上で生活をしている多くの人々を目にしました。当NGOは、その地区内において、路上の子どものための施設「ドロップインセンター」を運営しており、訪問したところ、10名の子どもたちに歓迎の言葉と歌で出迎えていただきました。この施設では、親からの育児放棄等により周辺で物乞いやジプニーへの客呼び込みをしている7歳~18歳までの子どもたちが通っています。栄養価の高い食事を提供し、衛生に関する指導を行い、学校に通っていない子どもたちへ読み書きや簡単な計算等を教えています。そして、親から躾や愛情を受けてこなかった子どもたちへ道徳の授業も行っています。

また、同じ境遇にあった人が行うことがより効果的であるため、元路上の子どもたちが現在の路上の子どもたちへ教育を行っています。これらの活動は、平成20年度に旧国際ボランティア貯金の寄附金配分を受けて開始した事業ですが、平成21年度の配分を受けてから現在までは団体の自己負担、マニラの大使夫人の会からの寄附、JICAからの支援等によって継続しているそうです。

(2)カリエカフェ

フィリピン大学内にオープンした元路上の子どもたちが運営する「カリエカフェ」を視察しました。現在50名のメンバーで構成されており、主に5名がシフト制で営業をしています。スタッフは、パンやパスタの調理、衛生管理、財務会計等の研修を受けています。カフェでは、パスタ、パン、ドリンクをいただきました。現在は1日に1,200ペソ(約2,500円)の売り上げがありますが、経営は赤字ということで、当NGOが補てんしているそうです。国の将来を担う学生が集う大学内であり、教育関係者や学生に路上の子どもに対する理解を深めてもらう狙いもあるとのことでした。平成29年度の当財団の助成対象の活動となっています。

(3)子どもの家

広域マニラ市の隣町に所在する児童養護施設「子どもの家」を視察しました。現在、元路上の子どもたち6名が入所しています。平成27年度に当財団の活動助成を受けて、「子どもの家」のトイレ・シャワールーム、洗濯場、給水設備を建設しました。平成28年度の助成では、入所した子どもたちのカウンセリングを行うためのコテージを設置するとともに、入所した子どもたちが現在も路上にいる子どもへ自らの経験を発信し、路上から抜け出し復学することへの大切さを伝えるための路上教育を実施しました。

子どもたちの話によると、この施設へ入所したことによって、1日3度の食事が提供され、学校へ通うことができ、安心して眠ることができるようになったそうです。当NGOでは、20名程の子どもが入所できるように来年度は2階を増築し、増築費や運営費増については更に寄附を募っていく予定とのことでした。

(4)フェアトレード生産施設

パヤタス地区のゴミ山のすぐ隣の建物で、SPNP (Sikap Pangkabuhayan ng mga Nanay sa Payatas:パヤタスの生計向上のためにがんばる母親達)という20代~60代の女性グループがぬいぐるみやキッチン雑貨等をミシンで製作していました。昨年末に長年続いたゴミの投棄は終了しましたが、当NGOは不衛生なゴミ拾い等で傷ついた子どもをここでケアしていたそうです。

「認定特定非営利活動法人アイキャン」の活動地視察

2.「認定特定非営利活動法人国境なき子どもたち」の活動地視察

ストリートチルドレンや法に抵触した青少年等を対象とした活動に対し、平成13年度から平成21年度までに旧国際ボランティア貯金の寄附金配分を8回受け、平成29年度には当財団の活動助成を受けています。

(1)チルドレンセンター(パヤタス地区)

上述のアイキャンと同じ地区内にあるセンターで、女性と子どもに対する暴力について、保護者へ啓発活動を実施している様子を視察しました。フィリピンで活動するCLRDC(Children’s Legal Rights and Development Center)というNGOに所属する法律の専門家が講師を行っていました。提携しているので、日当や交通費支給なしで、講師となってくれるとのことでした。

(2)若者の家

カラオカン市ノース地区にある「若者の家」を視察しました。法に抵触した子ども、親の虐待に遭った子ども、元ストリートチルドレンの子どもなど現在7名を受け入れ、衣食住・基礎教育・スポーツ活動の機会を提供し、子どもたちが家族のもとへ戻れるよう、保護者に対する啓発活動などに取り組んでいます。路上では束縛されないが施設内ではルールが厳しい等の理由から逃げ出す子どもがいるそうです。施設の中を案内していただいた後、近隣の広場で子どもたちとバスケットボールを楽しみました。また、その後バスケットボールのお礼に子どもたちからダンスを披露していただきました。

(3)チルドレンセンター(バゴンシーラン地区)

カラオカン市にて当NGOが運営する3つのチルドレンセンターのうち1つを視察しました。この施設では、様々な事情で学校に通えない子どもを対象に非公式教育(Alternative Learning System:ALS)を実施しています。この施設に通う子どもたちは、経済的な理由で公式教育をドロップアウトしたケースが多く、当NGOが実施している非公式教育は、コミュニティの中で実施しているため、交通費が不要なこと、授業以外の時間帯は働くことができる等の理由によって通うことができます。この日は、タガログ語の文法の授業を行っていました。生徒23名のうち、数名が自己紹介をしてくれました。自治体や教会から教室を無償で借りられることが多いそうで、地域に根差した活動となっているように見えました。また、コストシェアリングという、子どもを1名受け入れることにより、50~100ペソ/日を自治体が負担する制度があり、当NGOは複数の自治体と契約を締結しています。

「認定特定非営利活動法人国境なき子どもたち」の活動地視察

3.まとめ

フィリピンは貧富の差が大きく、高層ビルが立ち並んだ富裕層が暮らすエリアもありましたが、その一方で周辺にはトタン屋根の今にも崩れそうな家が立ち並ぶ貧しいエリアもありました。この貧富の差は、長い植民地時代の負の遺産でもあるとアイキャンの方からお聞きしました。スペイン、アメリカ及び華人にルーツをもつ実業家や地方大地主などの富裕層がいる一方、機械化等により次第に地方農園から締め出されつつある土着貧困層が存在し、社会が分断されてしまっているようです。職のない地方の貧困層が生計のあてのないまま大都市マニラに流入し、路上生活者やスラムを生み出してしまっているようです。今年度の調査では、最貧州のひとつビコール州において、貧困からの脱出を目指して自立農業の振興に取り組んでいる「国際開発フロンティア機構」の活動を視察する予定でしたが、前述したとおり中止となり、地方の問題に接することができず誠に残念でした。

現在、政府は産業育成に取り組んでいるようですが、交通渋滞など物流の課題もあり、海外からの進出も製造業ではICT産業など限定的と言われています。海外への出稼ぎ(Philippine Oversea Workers)や業務の一部請負(コールセンターなど)に経済が依存し、多くの労働者を受け入れられる産業がまだ育っていないようです。教育問題にも力を入れつつあり、児童数の増加に対応すべく、マニラ市内では校舎増築中の小学校を良く見かけました。しかし、校庭も狭く、午前と午後の二部制では、学校が楽しいものとならず、不登校の児童が増えてしまうように感じました。社会の分断を防ぎ、産業を生み出す基盤となるのはやはり教育であり、恵まれない子どもたちを支援する両NGOの活動は本当に意義深いと感じつつ帰国いたしました。

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