季刊 個人金融2025年夏号
発行年月 2025年7月
特集
ファイナンシャル・ウェルビーイング
近年、国内外でファイナンシャル・ウェルビーイング(以下「FWBという。」)の概念が注目されています。
今回の特集では、FWBの向上に関して、ウェルビーイングとの関係、必要となる金融リテラシーや資産管理能力、 それらを得るための金融経済教育の重要性、金融機関等が提供できるFWB向上に資するアドバイスやツールなどについて考察します。 更には、海外事例として米国を中心に、FWBの実現に向けた取組と企業価値向上の観点から従業員のFWB向上の取組についても分析・考察します。
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目次
特集
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ウェルビーイングとファイナンシャル・ウェルビーイングの関係
東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学SFC 特任教授
ウェルビーイング学会副代表理事 鈴木 寛
【ポイント】
近年、ウェルビーイング(WB)という概念が国内外で注目されており、政府も政策目標に積極的に取り入れている。
特に、生活満足度や人生の自由度と密接に関連するファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)への関心が高まっている。FWBの実現には、金融リテラシーや資産管理能力が重要であり、今後は、GDPに代わる主観的豊かさの指標としてWBを重視し、教育や政策において具体的な実践を進めることが求められる。
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国民のファイナンシャル・ウェルビーイング向上に向けて
(株)第一生命経済研究所総合調査部研究理事 村上 隆晃
【ポイント】
FWB とは「経済的な安心感を持ち、人生を楽しむための選択ができる状態」を指し、その向上は個人のWB全般を大きく高める効果がある。FWBの向上には、個人の努力に加え、国が金融経済教育やライフデザイン設計支援などを通じて国民全体のFWB向上を後押しする政策とその推進が重要である。
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1万人調査から読み解くファイナンシャル・ウェルビーイング
~FWB スコアと属性から行動まで~
MUFG資産形成研究所研究員 小澤 良祐
【ポイント】
2024年1月に企業勤務者1万人を対象に実施したアンケート調査から、保有資産額がFWBと密接に関係していること、FWB(スコア)が高い層は投資行動が積極的であり、低い層は現状把握が不十分で関心も低いこと等が判明した。FWB(スコア)の段階により支援すべき内容・学習したい内容が異なることは、金融教育を“自分ごと化”するために重要である。
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ファイナンシャル・ウェルビーイング実現に向けた老後資産形成・資産活用計画策定の方向性
三井住友信託銀行株式会社
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 清永 遼太郎
【ポイント】
最近では「老後資金不安」が投資行動の動機となる一方、老後の生活費や必要資金の具体的な見通しが立たないことが不安の根本要因である。FWB実現には、収入起点のキャッシュフロー適切管理と、安心感を得られる資産水準の可視化が重要である。
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資産形成の出口戦略としての資産取り崩しと資産寿命の延伸、見える化の考察
―ファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)における役割を考える―
帝京大学経済学部経営学科教授 上田 憲一郎
【ポイント】
老後資産の取り崩しには「大きな見取り図」を描き資産・年金の現状を見える化することが必要である。個々人のリスク許容度を踏まえて運用と取り崩しを考えることも求められる。
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米国にみるファイナンシャル・ウェルビーイングの発展
−個人・企業・金融専門家が目指す共通理念の形成と実装−
明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科専任教授 沼田 優子
【ポイント】
米国では政府による大規模調査と企業による金融教育推進、金融専門家の伴走支援など多層的支援によりFWBが社会全体の共通ゴールとして明確化されている。これらの取り組みは、日本においても大変参考になる。
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企業経営において重要性を増すファイナンシャル・ウェルビーイング
~海外の先進事例から得られる示唆~
和光大学経済経営学部経済学科准教授 梶原 真紀
【ポイント】
人的資本経営への注目が高まる中、従業員のFWBを支援し、投資家との対話に資する開示を行う企業の動きが欧米を中心に広がっている。本質的な取り組みを行う企業のケーススタディから、日本へ示唆を得る。
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※【ポイント】は事務局で作成したものであり、執筆者の承諾を得たものではありません。
支援活動フロントライン
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「小さな団体だからこそニッチなニーズを拾っていく」
NPO法人 しょーとてんぱー 田中 由佳
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書評
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志賀 信夫(著)
『貧困とは何か ―「健康で文化的な最低限度の生活」という難問』
同志社大学名誉教授
大阪公立大学客員教授 埋橋 孝文
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ダン・デイヴィス(著)大間知 知子(翻訳)
『金融詐欺の世界史』
東京情報大学 総合情報学部教授 堂下 浩
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季刊個人金融 20年の歩み(2012年~2017年)
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2026年夏号で創刊20周年を迎えます。
今号から数回にわたり、20年を振り返る図表を掲載します。
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お問い合わせ先
一般財団法人ゆうちょ財団 研究部
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