研究

季刊 個人金融2026年夏号

発行年月 2026年7月

特集 

地域間格差の現状と暮らしへの影響Ⅱ ―公的サービスの持続性と社会基盤の再構築―

前号では、地域間格差の現状や格差形成のメカニズムを明らかにし、その構造的課題と対応策を概観しました。
今号では、医療や介護をはじめとする公的サービスの地域間格差の実態から、社会保障制度が抱える課題を浮き彫りにして、あわせて、老朽化が進む公共インフラの維持・更新における各地域の深刻な現状を検証しました。
さらには、デジタル技術の活用による生活基盤の維持・改善策を提示するとともに、地域間格差の解消に向けた社会保障改革や地方財政のあり方など、持続可能な地域社会の構築に向けた具体的な方向性を考察しました。

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目次

特集

医師の地域偏在の現状と課題 ―「配置」から「アクセス」への再設計―

横浜市立大学国際商学部准教授 原 広司

【ポイント】
医療は生活の基盤であり公平に提供されることが望ましいが、医師の地域偏在の問題は30年余り解消されていない。また、地域偏在にかかる従来の測定方法には問題がある。今後は、医療の性質に応じた均てん化と集約の使い分け、そして、多様な担い手と技術を組み合わせたアクセスの再設計へ転換すべきである。

    2040年に向けて複雑化する介護の地域差への対応

    ㈱大和総研 政策調査部 主任研究員 石橋 未来

    【ポイント】
    2000年に創設された介護保険制度は、安心して暮らし続けるための基盤として定着しているが、1人当たり給付費等に地域差が生じている。今後、限られた介護資源の下で多様化するニーズに対応するため、地域ごとの需要変化に応じた提供体制の最適化と生産性向上、応能負担による持続性の確保が必要である。

    インフラ老朽化問題に対する地域金融の可能性

    東洋大学名誉教授  根本 祐二

    【ポイント】
    高度成長期に整備されたインフラは老朽化が進む一方、投資比率の低下により現状維持が困難となっている。そのため、統廃合や予防保全により更新費用を抑え長寿命化を図るべきであり、また、更新資金にはTIFなどの金融手法を活用するとともに、金融機関にはプログラムファイナンスの導入が求められる。

    地域のライフラインとして持続可能なラストワンマイル物流の確立に向けて

    三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱ 政策研究事業本部 経済財政政策部 主席研究員  原田 昌彦
    三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱ 政策研究事業本部 経済財政政策部 研究員  中村 佳太郎

    【ポイント】
    条件不利地域では買物困難が深刻化する中で、ECは有効な買物手段として期待されている。しかし、ラストワンマイル物流は担い手不足や採算悪化に直面しており、地域間格差の拡大が懸念される。このため、自治体が物流コーディネーターとなり、地域物流マネジメント体制を構築するとともに、国が制度・財政両面から支援することが重要である。

    デジタル技術活用による医療アクセス確保と効率化 

    公益財団法人東京財団 主席研究員  藤田 卓仙

    【ポイント】
    人口減少と高齢化、医師偏在などにより地域医療は構造的な課題に直面している。遠隔診療や遠隔モニタリング、医療データ連携、医療AI の活用により、限られた医療資源を補完し持続可能な地域医療体制を構築するとともに、法整備や地方創生、外国人材活用など多面的な取組みも必要である。

    日本が圧倒的に強いスマートシティと世界の地域課題解決リーダーの道筋

    国際スマートシティアドバイザー  岡村 久和

    【ポイント】
    スマートシティは単なるICT 実証ではなく世界的な産業として捉え直す必要がある。日本は歴史的に培ってきた都市づくりの強みと国際的な実績を有している。国内外の事例を踏まえ、地域課題の解決に貢献するスマートシティ分野で、日本が今後も世界をリードしていくための方向性と役割を示す。

    日本の社会保障と制度改革の方向性
    ―構造的特質と地域社会の課題をめぐって― 

    名古屋学院大学現代社会学部教授  小林 甲一

    【ポイント】
    人口減少・超高齢社会に対応するには、従来の社会保障制度を前提とするのではなく、その理念や制度原則を見直す必要がある。地域の医療・介護を持続可能なものとするためには、自助・共助・公助の役割や財源の在り方を再検討し、地域社会が支える新たな社会保障の仕組みへ転換していくことが重要である。

    地域間の税収格差是正について

    関西大学経済学部教授  橋本 恭之

    【ポイント】
    地方税収格差を是正するには、地域間格差の大きい地方法人二税への依存を見直し、地方消費税を中心とした地方税体系へ転換する必要がある。あわせて、なお残る地域間の財政力格差については、地方交付税の財政調整機能を活用し、公平で持続可能な地方財政制度を構築することが重要である。

    ※【ポイント】は事務局で作成したものであり、執筆者の承諾を得たものではありません。

    支援活動フロントライン

    悩みやしんどさがあっても、みんなで分かち合い、つながることで安心して過ごせる社会をめざして 
    ―親の会ピュアコスモとともに― 

    NPO法人ピュアコスモ 代表  久村 恵美

    書評

    寺村絵里子【編著】
    『女性のキャリア意識と組織・企業特性 ―仕事満足度とキャリア意識のパズルを検証する』

    千葉商科大学商経学部教授  大風 薫

    服部 孝洋【著】
    『マネー・マーケット入門 ―日本銀行の金融政策と短期金融市場』

    学習院大学経済学部教授  細野 薫

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