季刊 個人金融2026年春号
発行年月 2026年4月
特集
地域間格差の現状と暮らしへの影響Ⅰ ―社会経済構造の変容と格差形成のメカニズム―
格差の広がりは単なる所得水準の差にとどまらず、人口減少、 経済の停滞、そして教育・医療・インフラへのアクセスの不均衡 が絡み合う複合的な問題を招いています。これらが若者の都市部流出をさらに加速させ、地方の活力を奪うという「負の連鎖」を生み出し、地域社会の孤立やコミュニティの希薄化が生じています。
地域間格差の現状を多角的に把握するため、人口動態や産業構造、家計所得の実態を分析して、格差形成のメカニズムを解明しました。さらに、生活利便性(アクセシビリティ)の課題や、地域金融機関の動向を検証するとともに、地域活性化の好事例を紹介、構造的課題への対応策を考察しました。
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目次
理事長「巻頭言」、編集委員等「20周年記念の辞」
特集
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構造的な地域間格差と地方創生:経済指標と政策変遷から見る戦後の軌跡
成城学園常務理事、成城大学名誉教授 内田 真人
【ポイント】
わが国には産業構造や人口動態、IT・金融リテラシーの違いに起因する構造的な地域格差が存在する。所得等の格差は縮小傾向にあるが、行政サービスや資産面では拡大している。政府は全総や地方創生を通じて是正を試みたが、東京圏への一極集中は継続している。今後は短期的成果に捉われず、長期的視点に立った主体的な取り組みが不可欠である。
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産業構造変化による地域課題と対応
中央大学経済学部教授 山﨑 朗
【ポイント】
産業構造の高度化により第3次産業が主流となったが、その特徴である東京圏への本社機能や高所得サービスの集中が地域格差の本質となっている。現在は第1 次産業の比率低下により、かつての人口移動の構図も変化した。今後は地域創生を国内格差の是正だけでなく、国際的な格差是正と競争力再構築の戦略として捉え直すことが不可欠である。
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家計所得の地域間格差
―マクロ統計から垣間見える東京の異質性―
青山学院大学国際政治経済学部准教授 岡部 智人
【ポイント】
日本の家計所得の地域間格差は全体として低水準で安定しているが、東京都と他地域の間には顕著な乖離がある。東京都は労働所得が恒常的に高いだけでなく、資産所得の水準が突出しているのが特徴である。この中枢地域への資産所得の集中は、仏米との比較でも日本特有の現象であり、格差是正に向けた重要な政策的課題である。
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相続で家計資産の地域間移動が活発化、進む大都市圏への資産集中
三井住友信託銀行㈱ 調査部 上席調査役 青木 美香
【ポイント】
年間死亡数が急増する「大相続時代」を迎え、今後30年で125兆円の家計金融資産が地域間を移動すると推計される。その約半数が東京圏に流入し、地方の資産は軒並み減少する。この「地方から大都市圏へ」という資産移動の本流は、地域金融機関にとって預金流出の死活問題であり、早期の顧客化と関係強化が不可欠である。
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中山間地域における公共交通
―「待つ」から「探しに行く」へ:蜂の公共交通ビジネスモデル
鳥取大学工学部教授 谷本 圭志
【ポイント】
人口減少等で従来の公共交通モデルが破綻する中、住民との協働を軸に、多様な担い手が無理なく参加できる仕組み作りが不可欠である。また、旅客運送に限定せず福祉や物流等と連携し事業規模を確保することで、安定性と収益性を高めると同時に需要や担い手を能動的に創出し、地域課題を統合的に解決するモデルへの転換が鍵となる。
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地域金融機関の店舗サービスに対する家計のニーズと店舗戦略
愛知学院大学経済学部教授 近藤 万峰
【ポイント】
バブル期に急増した金融機関の店舗は現在リストラの対象となり、特に人口減少地域で利用環境が悪化している。一方で、家計の店舗ニーズは依然として高く、効率化のみを追求する戦略は地域金融機関の経営に深刻な打撃を与えかねない。ネット銀行との差別化を図るため、店舗を通じた利便性提供に注力することが不可欠である。
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サテライトオフィス誘致による地方創生を考える
―「徳島モデル」の意義―
成蹊大学国際共創学部教授 小田 宏信
【ポイント】
徳島県で先行したサテライトオフィス誘致の「徳島モデル」を再検討した本稿は、通信基盤の整備やBCP需要を背景に、官民が協働して誘致施策を構築した点を特徴に挙げる。神山町等の各地で異なるモデルが形成され、外部企業との接触が価値創出や関係人口増等をもたらした。これは地方の新しい働き方と経済再編の可能性を示すものである。
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移住者と空き家再生が支える尾道のまちの再生プロセス
―成熟期における地域の価値形成と再編条件―
甲南大学経営学部特任教授 望月 徹
【ポイント】
尾道市中心市街地の空き家再生と移住者による地域再生を分析したところ、活動が成熟期に入り、再生対象が大型の歴史的建築へと高度化している。また、信頼関係と制度的枠組みが重層化した調整構造へ移行し、次世代の参画も始まっている。この「尾道モデル」は、地域の歴史や真正性を価値資源とする「豊穣化の経済」として、人口減少時代の地方都市再生の動態的モデルを提示している。
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※【ポイント】は事務局で作成したものであり、執筆者の承諾を得たものではありません。
支援活動フロントライン
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「セクシュアル・マイノリティの生活とお金に関する問題を解決・改善することによって
自己肯定感と社会参加への意欲の増進を図る」
G-FRONT 関西
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書評
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クララ・E・マッテイ(著)
『緊縮資本主義: 経済学者はいかにして緊縮財政を発明し、ファシズムへの道を開いたのか』
立命館大学経済学部教授 松尾 匡
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D・ヒュー・ウィッタカー(著)
『新しい経済のつくり方――「人間中心」の日本型資本主義へ』
大阪大学社会経済研究所教授 堀井 亮
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